腹痛の原因
a 部位別の原因
- 上腹部の痛み
- 胃炎、胃潰瘍:食後に悪化することが多い。
- 胆石症、胆嚢炎:右上腹部の痛み、特に脂っこい食事の後。
- 膵炎:急性の場合、上腹部の強い痛みが背中に放散する。
- 食道逆流症(GERD):胸やけや酸っぱいものが上がってくる感覚。
- 下腹部の痛み
- 虫垂炎:初期はへそ周辺、次第に右下腹部に移る痛み。
- 腸炎:下痢や嘔吐を伴うことが多い。
- 大腸炎(潰瘍性大腸炎、クローン病):慢性的な腹痛や下痢。
- 婦人科疾患(卵巣嚢腫、子宮外妊娠など):女性に特有。
- 全体的な痛み(広範囲または不特定)
- 腸閉塞:吐き気、嘔吐、腹部膨満。
- 過敏性腸症候群(IBS):ストレスや食事が引き金になる。
- 腹膜炎:腹部全体が硬直し、非常に痛い。
b 痛みの性質別の原因
- 鋭い痛み(刺すような)
胆石症、大動脈瘤破裂、腸閉塞、腎結石。
- 鈍い痛み
胃炎、大腸炎、膵炎。
- 差し込むような痛み(波のような)
腸閉塞、胆管結石、腎結石。
c 急性か慢性か
- 急性腹痛
- 突然始まり、数時間以内に悪化する。
- 例:虫垂炎、腸閉塞、胆嚢炎、腹膜炎。
- 慢性腹痛
- 数週間から数カ月にわたって繰り返す。
- 例:IBS、慢性胃炎、クローン病。
腹痛の関連症状
以下の症状を伴う場合は原因を特定しやすくなります:
- 発熱:感染症(虫垂炎、腸炎)。
- 吐き気・嘔吐:腸閉塞、急性膵炎。
- 下痢:腸炎、大腸疾患。
- 血便・黒色便:消化管出血(胃潰瘍、大腸炎)。
- 排尿時痛:尿路感染症、腎結石。
腹痛に関する検査
腹痛の検査方法
原因を特定するために、以下の検査を行います。
a 基本的な評価
- 問診
痛みの場所、性質、持続時間、関連する症状(吐き気、発熱、便の異常など)を確認。
- 身体診察
腹部を触診して圧痛や腫れを確認。
b 画像検査
- 腹部X線
腸閉塞、穿孔(ガスの分布)を確認。
- 腹部超音波検査
胆石、膵炎、腎結石、婦人科疾患を評価。
- CTスキャン
腹腔内の詳細な評価。急性腹症(虫垂炎、腸閉塞など)に有用。
- MRI
特に婦人科疾患や腸疾患の精密検査に使用。
c 血液検査
- 炎症反応(CRP、白血球)
感染症や炎症の有無を確認。
- 肝機能検査
胆嚢や肝疾患を評価。
- 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)
膵炎を示唆。
- 腎機能検査
腎結石や腎疾患。
d 尿検査
e 内視鏡検査
- 胃カメラ(上部消化管内視鏡)
胃炎、胃潰瘍、食道逆流症の診断。
- 大腸内視鏡
大腸炎、ポリープ、腫瘍を評価。
f 血液培養・便検査
- 血液培養:敗血症や感染症を疑う場合。
- 便検査:感染性腸炎、消化不良、寄生虫。
腹痛の治療法
a 内科的治療
感染性疾患(腸炎、食中毒など)
- 治療方法
- 軽症の場合:水分補給(経口補水液)を中心とした対症療法。
- 中〜重症の場合:抗菌薬(例:腸炎に対する抗生物質)、点滴による補水。
- 注意点
下痢止めは細菌性腸炎では使用を控えることが推奨される。
胃腸の炎症(胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎)
- 治療方法
- 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI、H2ブロッカー)。
- 胃粘膜保護剤。
- 感染性の場合(例:ピロリ菌関連):抗生物質を併用。
- 生活習慣の改善
アルコールやカフェイン、脂肪分の多い食品を控える。
過敏性腸症候群(IBS)
- 治療方法
- 消化管運動を調整する薬(整腸剤、抗コリン薬)。
- 便秘型の場合:下剤。
- 下痢型の場合:腸内環境改善剤や止瀉薬。
- ストレス軽減のためのカウンセリングや抗不安薬の使用。
胆石症・胆嚢炎
- 治療方法
- 軽症の場合:抗生物質と鎮痛剤で炎症をコントロール。
- 繰り返す場合や重症例では、胆嚢摘出手術が必要。
腎結石
- 治療方法
- 小さな結石:水分摂取を増やし、自然排出を促す。
- 大きな結石:結石破砕術(ESWL)や手術が必要。
b. 外科的治療
虫垂炎
- 治療方法
- 抗生物質で炎症をコントロールした後、虫垂切除術を行うことが一般的。
- 穿孔がある場合、緊急手術が必要。
腸閉塞
- 治療方法
- 軽症:絶食と点滴で腸を休ませる。
- 重症:手術による腸管の解除。
腹膜炎
- 治療方法
- 原因疾患(虫垂炎や消化管穿孔など)に応じて手術。
- 抗生物質と点滴治療を併用。
婦人科疾患(卵巣嚢腫、子宮外妊娠など)
- 治療方法
- 緊急手術が必要なことが多い(例:子宮外妊娠の破裂)。
c 対症療法
鎮痛剤
- 腹痛が強い場合に使用。ただし、原因が不明な場合は使用を避けることがある(痛みが隠れるため)。
- 例:アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。
水分補給
- 嘔吐や下痢で脱水が懸念される場合、経口補水液や点滴で水分と電解質を補う。
食事療法
- 絶食:急性膵炎や腸閉塞などでは腸を休ませるために一時的に絶食。
- 消化に優しい食品:お粥やスープを少量ずつ摂取。
d 生活習慣の改善
- 食事管理
- 脂っこい食事や刺激物を避ける。
- 規則正しい食生活を心がける。
- ストレス管理
- ストレス性の腹痛(過敏性腸症候群など)には、リラクゼーション法や心理療法が有効。
緊急性のある頭痛
緊急性のある腹痛
以下の場合は、緊急受診が必要です。
- 激しい腹痛が突然始まる。
- 腹部が硬直し、触れると非常に痛い。
- 血便や黒色便。
- 吐き気や嘔吐が持続。
- 発熱、意識障害を伴う。
早めの受診と適切な検査が、原因の特定と治療につながります。