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下痢の原因や種類、薬について解説します。

下痢は、大人ならほぼ全員が経験したことがある症状だと思います。今回は下痢の原因や症状、何科を受診すべきかを解説しようと思います。

下痢とは

便の水分が多くなり、回数や性状が普段と比べて異常に柔らかくなる状態を指します。

  • 正常な便の水分は約70〜75%
  • 下痢便は水分が80%以上になることもあります

下痢の種類

  1. 急性下痢
    • 数日〜1週間以内に起こる
    • 原因の多くは感染症(ウイルス・細菌・寄生虫)や食事による刺激
  2. 慢性下痢
    • 4週間以上続く
    • 原因:過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)、薬剤、内分泌疾患など

下痢の症状

  • 便が水っぽくなる
  • 便の回数が増える
  • 腹痛や腹部膨満
  • 吐き気、発熱、血便(場合によっては危険信号)

下痢の原因

  1. 感染症
    • ウイルス(例:ノロウイルス、ロタウイルス)
    • 細菌(例:サルモネラ菌、カンピロバクター)
    • 寄生虫(例:ジアルジア)
  2. 食中毒
    • 汚染された食べ物や飲み物を摂取することで発症します。食べ物に付着した細菌やその毒素が原因です。
  3. 薬剤
    • 抗生物質や一部の薬剤は腸内の細菌バランスを崩し、下痢を引き起こすことがあります。
  4. 食物不耐症・アレルギー
    • 乳糖不耐症やグルテンアレルギー(セリアック病)は、特定の食品成分をうまく消化・吸収できず、下痢を引き起こすことがあります。
  5. 消化器系の疾患
    • 過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病などが下痢の原因になることがあります。
  6. ストレスや精神的な要因
    • ストレスや不安など、精神的な負担も下痢を引き起こすことがあります。
  7. 生活習慣の影響
    • 飲みすぎ、食べすぎ、カフェインの過剰摂取など、生活習慣の乱れが腸の働きを乱し、下痢になることがあります。

受診の目安

  • 2〜3日以上続く急性下痢
  • 高熱、血便、激しい腹痛
  • 脱水症状(口の渇き、尿量減少、めまい)
  • 慢性下痢(4週間以上)

下痢の治療薬

1. 止瀉薬

下痢の症状そのものを抑える薬です。

ロペラミド(商品名: ロペミン、ストッパなど): 腸の運動を抑え、腸内の内容物の移動を遅らせることで、下痢を緩和します。急性の下痢に効果的です。

注意: 感染性の下痢(細菌やウイルスによる場合)には、排出を妨げるため使用しない方が良い場合があります。

次硝酸ビスマス(商品名: ビオフェルミン止瀉薬など): 軽い下痢に対して、腸内の過剰な水分を吸収し、便を固める作用があります。

2. 整腸薬

腸内環境を整えることで、下痢を改善します。

乳酸菌製剤(商品名: ビオフェルミン、ラックビーなど): 腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。軽度の下痢や腸内のバランスが崩れた場合に効果的です。

酪酸菌製剤(商品名: ミヤBM: 酪酸菌は腸内で酸を生成し、有害菌の増殖を抑えます。慢性的な下痢に対しても効果があります。

3. 吸着薬

腸内で毒素やガスを吸着し、下痢を緩和します。

ケイ酸アルミニウム(商品名: アドソルビン): 腸内で毒素や有害物質を吸着し、便の水分を減らすことで下痢を改善します。

4. 抗菌薬

細菌感染が原因の場合には、抗菌薬が処方されることがあります。

抗生物質(例: ノルフロキサシン、シプロフロキサシン): 細菌性の下痢、特に旅行者下痢症や食中毒などで使用されます。ただし、ウイルス性の下痢には効果がありません。

5. 経口補水液(ORS)

下痢による脱水症状を防ぐため、水分と電解質の補給が重要です。軽度から中等度の脱水には経口補水液が推奨されます。

経口補水液(商品名: OS-1、ポカリスエットなど): 水分だけでなく、電解質(ナトリウム、カリウムなど)も補うことができるため、脱水症状を防ぐのに適しています。

6. 漢方薬

体質や症状に応じて漢方薬も使用されることがあります。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう): 慢性の下痢や消化不良に効果があり、胃腸の調子を整える作用があります。

四逆散(しぎゃくさん): ストレスや緊張による下痢に対して使用されることが多い漢方薬です。

これらの薬は、下痢の原因によって使い分ける必要があります。特に、感染症が原因の下痢や持続的な下痢の場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。

下痢を認めたら何科を受診すべきか

・内科

軽度の下痢や、風邪・ウイルス性胃腸炎などが疑われる場合は、まず「一般内科」を受診しましょう。一般内科では、食あたりや感染性腸炎、ストレス性の下痢、薬の副作用による下痢など、比較的よくある原因について診察し、治療してもらえます。

・ 消化器内科

消化器内科は、胃腸や肝臓、膵臓などの消化器官に特化した専門科です。慢性的な下痢(数週間以上続く)、血便がある、腹痛が強い、体重が減ってきているなどの症状がある場合は、「消化器内科」での精密検査や治療が必要になります。大腸カメラや血液検査、便検査などを通じて、より専門的に診断が行われます。

また下痢が2週間以上続いているような場合、「慢性下痢」と判断されます。以下のような疾患が考えられます。

  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 膵炎や胆嚢の病気
  • 食物アレルギーや乳糖不耐症
  • 大腸ポリープや大腸がん

これらは市販薬では治らないため、必ず「消化器内科」を受診し、必要な検査を受けることが大切です。特に、体重減少や貧血、倦怠感が伴う場合は要注意です。

・ 小児科(子どもの場合)

乳幼児や小さな子どもの下痢は、脱水症状につながりやすいため特に注意が必要です。小児の場合は「小児科」を受診してください。食物アレルギーやロタウイルス、ノロウイルスなど、子ども特有の病気も考慮する必要があります。

老年内科または総合内科(高齢者の場合)

高齢者の場合、体力の低下や持病の悪化、薬の副作用など、複数の要因が絡むことがあります。高齢者が下痢をしている場合は、「老年内科」や「総合内科」が適していることもあります。特に脱水や電解質異常のリスクがあるため、早めの受診が重要です。

・救急科

下痢に加えて、以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関にかかる必要があります。緊急性がある場合は、救急外来(ER)を利用することも考えましょう。

  • 高熱(38.5℃以上)
  • 血便(血が混じっている、または真っ赤な便)
  • 水のような下痢が1日に何度も続く
  • 激しい腹痛や吐き気、嘔吐
  • 意識がぼんやりする、脱水症状(口の渇き、尿が出ない、目が落ちくぼむ)

このような場合、感染性腸炎、大腸炎、あるいは消化器の緊急疾患(虫垂炎、虚血性腸炎、腸閉塞など)の可能性があります。緊急対応できる「救急科」または「総合病院」を受診してください。

・心療内科、精神科

緊張やストレスが原因で下痢が起こることもあります(過敏性腸症候群の一種)。この場合も、まずは消化器内科で診察を受け、その上で必要があれば「心療内科」や「精神科」の受診が勧められる場合があります。


まとめ:受診すべき診療科の早見表

状況・症状受診すべき診療科
軽い下痢・風邪のような症状一般内科
数日たっても下痢が治らない消化器内科
血便、激しい腹痛、発熱消化器内科または救急外来
子どもの下痢小児科
高齢者の下痢総合内科・老年内科
慢性の下痢(2週間以上)消化器内科
ストレスによる下痢消化器内科 → 心療内科
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