医療コラム 1

軽い頭痛と思ったら、実は脳の病気だったということがあります。

当院は脳神経内科なので、今回は特に相談の多い頭痛について記事を書こうと思います。頭痛について詳しくは、こちら

頭痛は子どもから大人まで認めるので、ついつい鎮痛薬で様子を見ることが多いと思います。

確かに頭痛の多くの原因は、風邪(コロナウイルス感染含む)、片頭痛、睡眠不足、ストレス、気圧、喫煙、精神的なものなどでしょう。しかし危険な頭痛、くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎などが原因にもなることを忘れてはいけません。


危険な頭痛の特徴は、頭痛が断続的であることです。特にレッドフラグといえる随伴症状は、嘔気、喋りにくさ、手足の動かしにくさなどです。

頭痛は一般的に、脳神経内科、脳神経外科の医師が専門領域です。

時には我々の診察に加えて、頭のCTやMRIを撮ることもあります。

一般的には、急性の頭痛にはCT、慢性の頭痛にはMRIを撮影します。


特にご高齢の方の頭痛の管理は、難しいと感じることがあります。

理由は、ご高齢の方は先述の危険な頭痛となる可能性が若年者より高いからです。

そしてもう1つの理由は、高齢者の頭痛は、これまでの基礎疾患、内服薬の影響、薬の代謝効率など、複数の原因が複雑に相まっているからです。Robert G Kaniecki, Andrew D Levin. Chapter 28 - Headache in the elderly. Handbook of Clinical Neurology 2019; 167: 511-528.

なので特にご高齢の方の頭痛の訴えに対しては、どこが痛いか、どのような痛みか、何時間続いているか、嘔気などの随伴書状、これまでの既往歴、飲んでいる薬などをしっかり質問してから、診察することを心がけています。


当院は、いつでも頭痛診療が出来る体制が整っています。緊急の場合は、入院施設のある病院を紹介することもあります。些細なことでも構いませんので、お気軽に来院なさってくださいね。

正常な物忘れ、病気による物忘れの違いを説明します。

今回は物忘れについて、記事を書いていきます。

まず、物忘れの多くの原因は、加齢、認知症です。認知症については、こちら

加齢による物忘れは、病気ではありません。認知症による物忘れは病気です。前者は、忘れた自覚がある、出来事の一部を忘れる、などが特徴です。例えば、朝食を食べたことは覚えているがメニューの一部を忘れて、人にそれを指摘されて自分が忘れたと自覚します。後者は、忘れた自覚がない、出来事の全部を忘れる、などが特徴です。例えば、朝食を食べたこと自体を忘れて、人にそれを指摘されても自分が忘れていることを自覚できません。


認知症は、アルツハイマー病が有名ですが、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症など、色々と種類があります。今回は認知症の約6割を占める、アルツハイマー病について記載します。

アルツハイマー病の初期症状は認知症症状や意欲低下ですが、症状が進行すると徘徊、妄想、興奮、不潔行為などを認めます。これらが出ると本人だけでは日常生活が行えないので、介護介入が必要となります。


アルツハイマー病は脳の変性疾患であり、早急に治療介入が必要です。治療薬はアリセプト®、レミニール®、イクセロンパッチ®、リバスタッチ®、メマリー®です。内服薬と貼付薬があり、剤形が豊富です。しかしこれらの薬は、アルツハイマー病を根本的に治療出来るものではなく、症状の進行を遅らせるものです。なぜアルツハイマー病を根治治療する薬がないのか。それは、アルツハイマー病の原因が完全に解明されていないこと、血液脳関門の存在が薬物効果を阻害していることが、アルツハイマー病の根治薬が開発されにくい理由の1つです。Ka Hong Wong, Muhammad Kashif Riaz, et al. Review of Current Strategies for Delivering Alzheimer’s Disease Drugs across the Blood-Brain Barrier. Int. J. Mol. Sci 201920(2): 381.


なので、直近の将来でアルツハイマー病を根治出来る治療薬が開発されることは、考えにくいと思います。

当院では、脳神経内科外来で物忘れ外来をやっております。いつでもお気軽にご来院ください。

筋肉のぴくつきは、ALSの可能性もあります。

今回は、筋肉のぴくつきについて書いていきます。

顔面や手足がぴくぴく動いた経験、ある方が多いと思います。

大体は時間が経てば、治ることが多いです。

実は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)も、全身の筋肉のぴくつきを認めます。

ALSについて、詳しい説明はこちら

つまり、危険な筋肉のぴくつきもあるということです。


まず、顔面のぴくつきについて説明します。

顔面、特に片側の目がぴくついた経験がある方は多いのではないでしょうか。

これは、眼瞼ミオキミアです。

身体的、精神的ストレスやカフェインの摂取が原因と言われています。片側の上まぶたもしくは下まぶたが、不規則にぴくつきます。もちろんこれは病気ではないので、安心して大丈夫です。


次に手足の筋肉のぴくつきは、多くは正常です。ストレスや疲労でなると言われています。

この現象をBFS(benign fasciculation syndrome)と言います。


ではBFSとALSのぴくつきは、どのような違いがあるのか。

前者は1ヶ所の筋肉で起きる、規則的で早いぴくつき、筋力低下を伴わないことが特徴です。対して後者は、全身の多くの筋肉に起き、不規則で遅いぴくつきで、筋力低下を伴うことが多いです。

実際BFSがALSに発展したことは、過去の研究ではないとされています。Alexandra Filippakis DO, Jordan Jara BS et al. A prospective study of benign fasciculation syndrome and anxiety. Muscle Nerve. 2018 Dec;58(6):852-854. 

よく聞く「隠れ脳梗塞」について、説明します。

今回は隠れ脳梗塞とは何なのか、について記載していきます。

脳梗塞の概要は、こちら


まず、脳梗塞が起きる脳の場所によって、出る症状が違います。

場所によって症状は、運動障害、半身麻痺、嚥下障害、しびれ、嘔吐、記憶障害、呂律が回らないなど千差万別です。もっと言うと、脳梗塞が起きても症状が何も出ない脳の場所があります。そこに脳梗塞を起こすことを「隠れ脳梗塞」と言います。医学的には、無症候性脳梗塞といいます。


特にご高齢の方は、隠れ脳梗塞がある方が多いです。頭部CT、MRIを撮ったら、隠れ脳梗塞が見つかったというケースが多いです。70歳以降は、頭のMRIを撮ると35%の方が隠れ脳梗塞があったという研究があります。小林祥泰ら, 無症候脳梗塞, 日本内科学会雑誌 86 巻 (1997) 9 号,1800-1805. 


どんな病気もそうですが、無症状のものには治療は不要です。つまり、隠れ脳梗塞に対して、バイアスピリンや抗凝固薬を飲む必要はありません。しかし現実は、予防的にこれらの薬を導入されている高齢者も少なからずいます。隠れ脳梗塞は全く問題ないのかというと、そうではありません。脳梗塞が起きたというのは事実です。次は何かしらの症状を認める脳梗塞を起こす可能性は大いにあります。なので、定期的に頭部MRI撮影、頚動脈エコーをすることを推奨されています。

手の震えの原因は?神経の病気が隠れている可能性があります。

手の震えについてを自覚したことがある方、多いのではないでしょうか。

手の震えがあっても日常生活に大きな支障はないかもしれませんが、時に重篤な病気が隠れていることがあります。

原因は様々で、多くは体質、疲労、加齢、アルコール、ストレス、薬剤、甲状腺疾患、遺伝です。しかし脳梗塞、パーキンソン病、その他パーキンソン病に類似する疾患、その他中枢系疾患の可能性もあります。


震えは医学的に「振戦」といいます。振戦は主に静止時振戦、動作時振戦に分類されます。

静止時振戦とは、名前の通り何もしていない静止時に認める振戦です。比較的ゆっくりの振戦(4〜6Hz)で左右差があることが多く、パーキンソン病で認めるのが有名です。パーキンソン病以外にも類似疾患である、多系統萎縮症、大脳基底核変性症、進行性核上性麻痺などでも認めることが知られています。典型例では上記の通りですが、パーキンソン病でも両側性の震えが出る方や、震えの出ない方もいます。パーキンソン病も、振戦(震え)優位形、姿勢不安定性歩行困難型など、色々なサブタイプがあるのです。Mary Ann Thenganatt et al. Parkinson Disease Subtypes. JAMA Neurol. 2014;71(4):499-504.


次に動作時振戦です。上肢を挙上位に保つ姿勢を取った時に特に認める振戦は、本態性振戦、甲状腺機能異常、疲労不安、慢性アルコール中毒などが原因で起きます。これは規則的で比較的早い(7〜14Hz)であることが特徴です。また先述の姿勢をとった時だけでなくあらゆる運動時に振戦が起きる場合、脳梗塞などの中枢性疾患の可能性が高いです。この震えは比較的ゆっくり(6〜8Hz)で不規則な動きをすることが特徴です。


ここまで読まれて、震えの原因を知るには結構難しいと思った方が多いと思います。

震えの専門は、脳神経内科、脳神経外科です。当院は脳神経内科なので、些細なことでもご相談いただけたらと思います。

手の痺れ、原因は一体何なのか?

手に痺れを感じたことはないでしょうか。今回は手の痺れの原因について説明します。

私たちが冷たい、痛いなどの感覚を感じるのは、末梢神経→脊髄→脳と刺激が伝わるからです。脳がその刺激を感知して、感覚を感じます。痺れの原因は、末梢神経、脊髄が原因となることが多いです。


末梢神経が原因の痺れは、神経の圧迫、薬剤、糖尿病、アルコールなどです。神経の圧迫が原因の場合、特徴的な痺れの分布になります。例えば手のひらの親指〜中指だけ、手のひらと手の甲の薬指〜小指、などです。それ以外が原因の場合、多くは指先だけの痺れのことが多いです。頻度の多い糖尿病による痺れは、左右対称性に足の指先から認め、進行すると痺れの範囲がどんどん頭側へ広がっていく特徴があります。神経の圧迫はどんな時に起きるのか。エピソードは、肘を机についたまま寝た、パートナーに腕枕をしたまま寝た、などが多いです。


脊髄が原因の手の痺れの多くは、首の骨(頚椎)の変性です。痺れの分布も中指だけ、薬指と小指だけ、などと特徴的な分布となっています。脊髄の痺れの分布は、以下の記事を見るとわかりやすいです。

野崎寛三, デルマトーム図. 脊髄外科. 2012 年 26 巻 2 号 p. 147-161

力が入らない(麻痺)原因、病気をまとめました。

今回は筋力低下について書きます。

筋力低下とは、平たく言うと力が入りにくいということです。

自分で筋力低下があると思っても、実際は正常なことはよくあります。

なので筋力低下を感じた場合、本当にそうなのか脳神経内科や整形外科を受診するべきです。


次に筋力低下の原因です。我々は体を動かす時、脳→脊髄→末梢神経→筋肉と、刺激が伝達

します。つまりそのいずれかが障害されていると、筋力低下を認めます。以下、具体的な原因を列挙していきます。


脳が原因の筋力低下:脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、多発性硬化症、中枢神経感染症、脳性麻痺etc

脊髄が原因の筋力低下:脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、脊髄梗塞、脊髄腫瘍、脊髄炎etc

末梢神経が原因の筋力低下:手根管症候群、肘部管症候群、橈骨神経麻痺、糖尿病性神経障害、糖尿病、アルコール多飲、薬剤性、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎etc

筋肉が原因の筋力低下:筋ジストロフィー、多発筋炎、皮膚筋炎etc


原因によって治療は異なりますが、共通しているのがリハビリテーションの重要性です。リハビリテーションの進歩は目覚ましいと思います。一例ですが下肢麻痺患者に脊髄硬膜外電気刺激と運動トレーニングを組み合わせたところ、地上歩行出来るようになった方が数名いたという症例報告もあります。

Jennifer Abbasi. Recovery of Voluntary Movement After Paralysis. JAMA. 2018 Nov 13;320(18):1850.

今後の更なる発展も期待しています。

呂律が回らない(構音障害)の原因は一体何か?

呂律が回らないことを、医学的には構音障害と言います。今回、構音障害の原因についてお話します。

声の高低は声帯が関与していますが、発音は唇、舌、軟口蓋が関与しています。主に「ぱ」行は唇、「た」行は舌、「か」行は軟口蓋の働きが大きいです。これらの器官を動かす神経はそれぞれ異なり、唇は顔面神経、舌は舌下神経、軟口蓋は舌咽神経です。つまり顔面神経が障害されると「ぱ」行が発音しにくくなります。それに加え、片側の閉眼困難、口角下垂などの症状も認めます。舌下神経なら「た」行の発音障害と共に、舌をまっすぐ出せぜ片方に偏位してしまいます。舌咽神経なら「か」行が発音しにくくなります。構音障害のタイプは主に6種類に分類され、診察でどの神経が障害されているかがわかるとも言われています。

Pam Enderby. Chapter 22 - Disorders of communication: dysarthria, Handbook of Clinical Neurology, Volume 110, 2013, Pages 273-281.


さて、これらの神経が障害される病気は何がありますでしょうか?最も多い原因は脳梗塞です。脳梗塞についての記事は、こちら。その他、頭蓋内疾患全般、Bell麻痺、ラムゼイハント症候群など、原因は多岐に渡ります。またこれらの神経が障害されていなくても、加齢、ストレス、アルコールが原因で構音障害となることがあります。

脳梗塞が原因の構音障害は秒単位で急に症状を認めます。特に顔面神経成分が障害されやすく「ぱ」行の発声困難感に加えて口角下垂を認めることが多いので、口に水を含むと下垂している側からこぼれやすいことを訴える患者様が多いです。

構音障害のタイプは主に6種類に分類され、構音障害のパターンで脳のどの部位が障害されているかが診察でわかるとも言われています。


脳梗塞を起こす脳の場所によって出る症状が異なるので、脳梗塞になったから必ずしも構音障害を認めるわけではありません。

また失語と構音障害は異なります。失語とは、発音自体は問題なく出来ます。しかし頭に浮かんだ言葉を声に発することができない症状のことを言います。失語も脳梗塞で認める症状の1つなので、覚えていたほうが良いでしょう。

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西新宿今野クリニック

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西新宿今野クリニック 内科・発熱外来・脳神経内科・整形外科
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内科・発熱外来・脳神経内科・整形外科、リハビリテーション科

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