夜眠れないことで悩んでいる方は多いと思います。しかし睡眠薬は種類が多くて、どれを飲めばいいかわからない人も多いと思います。
一般的に、眠れない人には持続時間の短い睡眠薬、中途覚醒する方は持続時間が長い睡眠薬を選択します。しかし持続時間が長い睡眠薬を選択した場合、効果が翌日まで長引いて起床後も眠気が続くことがあり、注意が必要です。なので当院では、まず持続時間の短いデエビゴやゾルピデムの処方をすることが多いです。
しかしこれらの睡眠薬には副作用があります。特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬は体内に蓄積し、様々な副作用が出ることがわかっています。特に薬物代謝能が若年者に比べて乏しい高齢者は、その傾向が顕著です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用は、日中の眠気、精神症状、ふらつき、頭痛、健忘、など多岐に渡ります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を6ヶ月以上内服を続けた者のうち、約1/3が不安、不眠、筋肉の痙攣などの症状を認めたという報告もあります。Malcolm Lader. Benzodiazepine harm: how can it be reduced?. Br J Clin Pharmacol. 2014 Feb;77(2):295-301.
またベンゾジアゼピン系睡眠薬を常習的に使用している方がいきなり服薬を中断すると、自律神経の過活動、手指振戦、不眠、嘔気嘔吐、幻視幻覚、不安、痙攣発作などを認めることがあります。これをベンゾジアゼピン離脱症候群といいます。従って少ない量でも、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬をやめる場合には、離脱症状が起きないように徐々に減らすことが大事です。
これらの記載を読むと、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に抵抗感を持った方が多いと思います。今はメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬など、正しい睡眠のサイクルを構築してくれる薬もあるので、検討してみてください。
てんかんは子供になるイメージが強いと思いますが、大人にもなります。子供のてんかんの原因は先天的、生まれ持ったもののことが多いです。一方、大人のてんかんは後天的なことが多いです。具体的には、脳梗塞や硬膜下血腫、アルツハイマー病など、脳に何かしらダメージを与えるものが原因となります。もちろんこれらの病気を患うのは高齢の方なので、てんかんを持つ高齢者は多いです。発展途上国では50歳以上から、先進国では60歳以上からてんかんの有病率が有意に上昇するというデータもあります。
高齢者のてんかんで特に注意すべきなのは、車の運転でしょう。昨今ニュースで高齢者の交通事故が話題となりますが、その一部にてんかん発作が原因だったものもあると思います。運転中にてんかん発作を起こし意識障害となると、大事故を起こす可能性があります。現行の道路交通法では、2年以内てんかん発作を起こした方は運転ができません。2年以上発作がない方でも運転免許の取得や更新の際は、都度医師の診断書が必要です。仮にてんかん発作を起こしても、抗てんかん薬を飲み上記条件を満たせば、運転可能です。従来の抗てんかん薬は定期的に血中濃度を計測しなくてはいけませんでしたが現在はそれが必須でない薬も多いので、内服のハードルは下がっていると思います。
アミロイドーシスは珍しい病気ですが、アントニオ猪木さんが患っていたことで聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
この病気は、人体に悪影響を及ぼすアミロイドというタンパク質が、全身の臓器に沈着することで臓器障害を認める病気です。障害される臓器は、心臓、腎臓、小腸〜大腸、末梢神経など多岐に渡ります。例えばアミロイドが心臓に付着したら心不全、心肥大、不整脈に、腎臓なら腎不全、ネフローゼ症候群に、腸なら吸収不良や下痢、末梢神経なら排尿障害、発汗障害、勃起障害を認めます。アントニオ猪木さんは、心アミロイドーシスによる心不全が直接の死因でした。
原因は、多発性骨髄腫などの血液疾患、リウマチ性疾患などの慢性炎症性疾患、遺伝、加齢、透析などと言われています。アントニオ猪木さんは全身性トランスサイレチンアミロイドーシスという病気で、詳細は公表されていませんがこのタイプのアミロイドーシスは遺伝か加齢と言われています。検査は、アミロイドが沈着している組織を生検し、標本をコンゴーレッド染色で染めることで確定診断となります。つまり大腸なら内視鏡での生検、末梢神経なら神経生検をするということで、侵襲的な処置となります。それだけ、診断は難しい病気なのです。
治療は原因によって異なります。アミロイドーシスは従来、治療有効性の高い薬はありませんでした。しかし最近ではダラツムマブとボルテゾミブの併用療法など、科学的根拠のある治療法も確立されてきています。Giovanni Palladini et al. How I treat AL amyloidosis. Blood. 2022, 139(19):2918-2930.
糖尿病薬は内服薬、注射薬と剤形が多岐に渡ります。
内服薬では以下の種類です。
・ビグアナイド薬:メトホルミンなど
・チアゾリジン薬:アクトスなど
・DPP-4阻害薬:ジャヌビア、テネリア、トラゼンタ、グラクティブ、オングリザ、マリゼブなど
αグルコシダーゼ阻害薬:ベイスン、セイブル、グルコバイなど
・SGLT2阻害薬:カナグル、デベルザ、スーグラ、フォシーガ、ジャディアンスなど
・SU薬:アマリール、グリメピリド、グリミクロンなど
注射薬は、GLP1受動態作動薬、インスリン製剤です。
沢山あって使い分けが難しそうですよね。
1型糖尿病、妊娠糖尿病、膵性糖尿病、ミトコンドリア糖尿病は、体内のインスリン分泌量が少ないので、原則治療薬はインスリンです。生活習慣病の2型糖尿病は、内服薬、GLP1受動態作動薬、インスリンのいずれの薬剤も適応があります。まず2型糖尿病の患者様は、まず内服薬から導入します。糖尿病の治療効果はHbA1cで判定し、合併症予防となる7.0%を目標とします。内服薬を1剤導入して目標達成とならなかった場合、同薬剤の量を増やすか2剤目を追加します。追加する薬剤は、導入済みの薬剤と異なる作用機序のものが望ましいです。ガイドラインなどでの統一された基準はないのですが。糖尿病内服薬を3〜4剤導入しても目標達成とならない場合、GLP1受動態作動薬、インスリン製剤の導入を検討します。
内服薬の選択は担当医の判断となりますが、当院では心臓、肝臓、腎臓、呼吸機能が正常であり、乳酸アシドーシスとなる病態がない場合は、メトホルミンを第1選択としています。歴史のある薬で血糖降下作用が十分に科学的に証明されているからです。第2、3選択の内服薬は、DPP-4阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬を選択することが多いです。SU薬は低血糖のリスクが高いので、現在は選択されることが少なくなっています。
発熱したら「コロナの抗原もしくはPCR、インフルエンザ抗原が陰性であれば、風邪」という風潮があると思います。確かに発熱の原因は、COVID-19、コロナ、インフルエンザ、肺炎、その他感染症など非常に多岐に渡ります。更に言うと、髄膜炎、感染性心内膜炎、肝炎、心筋炎、悪性腫瘍など、命に関わる病気の可能性もあります。
なので、「コロナとインフルエンザの検査で陰性だったら風邪」という考えは安直であり、かつ危険な判断です。今回は風邪の診断はどのようにすべきか、を説明します。
風邪はほとんどの人が引いたことがあると思います。風邪を定義するとしたら、ほとんどの場合3〜5日で自然寛解するウイルス感染症で、多くは咳、鼻汁、咽頭痛といった多症状を呈するウイルス性上気道感染、です。
つまり、咳、鼻汁、咽頭炎のいずれも症状がなく、1週間以上続く発熱は、風邪ではない可能性があります。
いくつか例を出します。
「発熱、頭痛が1週間続いている。しかし咳、鼻汁、咽頭痛はない」というケースは、典型的な風邪らしくありません。髄膜炎などの可能性もあります。
「発熱、排尿痛が3日続いている。しかし咳、鼻汁、咽頭痛はない」というケースも風邪らしくはありません。膀胱炎を疑う病歴です。
「発熱、片側の肘が腫れて痛い」というケースは、風邪ではなく、関節炎を疑います。
これらの例のように、痛みの部位が明らかなら疾患も予想できますが、発熱のみの場合は診断に難渋します。原因がわからない発熱の3大原因は悪性腫瘍、感染症、膠原病と言われており、常にこれらの可能性も考えなくてはいけません。
なので熱が出た時にご自身で風邪薬を飲んで様子みるのは良いですが、上記のように典型的な風邪ではない場合、病院受診した方が良いでしょう。
西新宿駅から徒歩3分
医療機関名 |
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西新宿今野クリニック |
住 所 |
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-21-7 |
診療科目 |
整形外科、脳神経内科(神経内科)、内科、リハビリテーション科 |
電話番号 |
03-3371-5813 |