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鉄剤だけじゃない!貧血治療で使われる薬の種類と選び方

貧血の治療は、単に鉄剤を使うだけではありません。貧血の原因やタイプに応じて、適切な薬剤を選ぶことが重要です。代表的なのは鉄欠乏性貧血に用いる鉄剤で、経口薬や注射薬によって不足した鉄分を補います。一方、タミンB12欠乏や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血では、ビタミンB12注射や葉酸の内服が中心です。慢性腎疾患や炎症性疾患に伴う貧血では、エリスロポエチン製剤が赤血球の産生を促す目的で使用されます。また、原因が薬剤性や出血性の場合は、原因除去や止血治療が必要です。どの薬を選ぶかは、血液検査での鉄、フェリチン、ビタミンB12、葉酸の値や腎機能、症状の重さによって判断されます。自己判断で薬を使うと改善が遅れたり副作用が出ることもあるため、必ず医師の診断と指導のもとで治療を行うことが大切です。


目次

貧血の定義

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビン量が低下し、全身に十分な酸素を運搬できなくなった状態を指します。一般的には、ヘモグロビン値が成人男性で13.0g/dL未満、成人女性で12.0g/dL未満の場合に貧血と定義されます。ヘモグロビンは赤血球に含まれるたんぱく質で、酸素を体の各組織へ届ける重要な役割を担っています。その量が低下すると、疲れやすさ、動悸、息切れ、めまいなどの症状が現れることがあります。貧血は病名ではなく、鉄欠乏や出血、慢性疾患など、さまざまな原因によって生じる状態であるため、原因の特定が重要です。


貧血による主な症状

貧血では、血液中のヘモグロビン量が低下することで全身への酸素供給が不足し、さまざまな症状が現れます。代表的な症状として、疲れやすさや倦怠感が挙げられます。軽い動作でもすぐに疲れを感じたり、十分に休んでもだるさが取れないと感じることがあります。また、動悸や息切れもよくみられる症状です。酸素不足を補おうとして心臓が速く拍動するため、階段の昇り降りや軽い運動で息が切れやすくなります。めまいや立ちくらみ、頭がふらつく感じも貧血に特徴的で、急に立ち上がった際に強く自覚されることがあります。そのほか、顔色や唇、爪が白っぽくなる、頭痛、集中力の低下などがみられることもあります。鉄欠乏性貧血では、氷を無性に食べたくなる、舌の痛みや口角炎が起こるといった特有の症状が出る場合もあります。症状の現れ方には個人差があり、軽度でも自覚症状が強い場合や、重度でも気づかれにくいことがあるため、気になる症状があれば早めの受診が大切です。

貧血の原因

1. 鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、貧血の中で最も頻度が高い原因です。赤血球中のヘモグロビンは鉄を材料として作られるため、体内の鉄が不足すると十分なヘモグロビンが産生できず、貧血を引き起こします。鉄不足は、鉄の摂取量の不足、体内での吸収低下、鉄の喪失増加など、さまざまな要因によって生じます。特に多い原因は慢性的な出血です。女性では月経による鉄の喪失が大きく、過多月経がある場合は鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。男性や閉経後女性では、消化管出血が隠れていることもあり、胃潰瘍や大腸ポリープ、大腸がんなどの評価が重要になります。また、偏った食事やダイエットによる鉄摂取不足、胃切除後や炎症性腸疾患などによる鉄吸収障害も原因となります。鉄欠乏性貧血は、単なる栄養不足として見過ごされがちですが、背景に重要な病気が隠れていることもあるため、原因検索と適切な治療が重要です。

2. ビタミンB12欠乏性貧血

ビタミンB12欠乏性貧血は、赤血球の正常な成熟に必要なビタミンB12が不足することで起こる貧血です。ビタミンB12はDNA合成に関与しており、不足すると骨髄での赤血球産生が障害され、巨赤芽球性貧血と呼ばれる特徴的な貧血を来します。鉄欠乏性貧血とは異なり、赤血球が大きくなることが特徴です。主な原因として、吸収障害が挙げられます。代表的なのが自己免疫により内因子が欠乏する悪性貧血で、胃の壁細胞が障害されることでビタミンB12の吸収が低下します。また、胃切除後、萎縮性胃炎、回腸疾患などでも吸収障害が起こります。食事摂取が原因となることは少ないものの、厳格な菜食主義では欠乏することがあります。症状は一般的な貧血症状に加え、しびれや歩行障害などの神経症状を伴う点が特徴です。治療が遅れると神経障害が不可逆的になることもあるため、早期診断と適切なビタミンB12補充が重要です。

3. 葉酸欠乏性貧血

葉酸欠乏性貧血は、赤血球の産生に必要な葉酸が不足することで起こる貧血で、ビタミンB12欠乏性貧血と同様に巨赤芽球性貧血に分類されます。葉酸はDNA合成に関与しており、不足すると骨髄での赤血球の成熟が障害され、正常な赤血球が作られなくなります。原因としては、食事摂取不足が比較的多く、偏った食生活やアルコール多飲が関与します。また、妊娠や授乳期では葉酸の需要が増加するため、欠乏が起こりやすくなります。さらに、消化管疾患による吸収障害や、一部の薬剤の影響で葉酸代謝が阻害されることもあります。症状は、倦怠感や息切れなど一般的な貧血症状が中心です。ビタミンB12欠乏性貧血と異なり、神経症状を伴わない点が特徴ですが、鑑別は重要です。適切な診断のもとで葉酸補充を行うことで、比較的速やかな改善が期待できます。

4. 慢性疾患に伴う貧血(慢性病貧血)

慢性疾患に伴う貧血は、感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍、慢性腎臓病などの基礎疾患に伴って生じる貧血で、「慢性病貧血」とも呼ばれます。この貧血は、鉄欠乏そのものではなく、体内の鉄利用が障害されることが主な原因です。慢性的な炎症によりサイトカインが産生され、鉄代謝を調節するヘプシジンが増加することで、鉄が貯蔵部位にとどまり、赤血球産生に十分利用されなくなります。慢性病貧血では、血清鉄は低下しますが、フェリチンは正常から高値を示すことが多く、鉄欠乏性貧血との鑑別が重要です。赤血球は正球性または軽度小球性となることが多く、進行は緩やかです。治療の基本は、貧血そのものではなく基礎疾患のコントロールです。単純な鉄補充では改善しにくいため、背景にある慢性疾患を適切に治療することが重要となります。

5. 溶血性貧血

溶血性貧血は、赤血球が通常よりも早く破壊されることで起こる貧血です。本来、赤血球の寿命は約120日ですが、何らかの原因で破壊が亢進すると、骨髄での産生が追いつかず貧血を来します。赤血球産生自体は保たれている、あるいは亢進している点が特徴です。原因は大きく赤血球自体の異常と赤血球外の要因に分けられます。前者には遺伝性球状赤血球症や酵素異常症が含まれ、後者には自己免疫性溶血性貧血、薬剤、感染症、人工弁などが挙げられます。溶血が進行すると、ビリルビンが増加し、黄疸や褐色尿がみられることがあります。症状は一般的な貧血症状に加え、黄疸、脾腫、尿の色調変化などが特徴です。検査では網赤血球増加、LDH上昇、ハプトグロビン低下などがみられます。原因に応じた治療が必要であり、専門的な評価が重要です。

6. 再生不良性貧血

再生不良性貧血は、骨髄の造血機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少する疾患です。骨髄で血液細胞が十分に作られなくなるため、汎血球減少を来すことが大きな特徴です。多くは原因不明の特発性ですが、薬剤、放射線、ウイルス感染、自己免疫反応などが関与する場合もあります。症状は貧血による倦怠感や息切れに加え、白血球減少による感染症の起こりやすさ、血小板減少による出血傾向がみられます。鼻出血や歯肉出血、皮下出血が続く場合は注意が必要です。検査では、末梢血で汎血球減少を認め、骨髄検査で低形成または無形成骨髄が確認されます。治療は重症度に応じて、免疫抑制療法や造血幹細胞移植が選択されます。早期診断と専門医による適切な管理が重要な疾患です。

7. 鉄の吸収不良

鉄の吸収不良は、体内に十分な鉄が摂取されていても、小腸での吸収が障害されることで鉄欠乏性貧血を引き起こす原因となります。鉄は主に十二指腸から上部空腸で吸収されるため、この部位の機能低下や環境変化があると、吸収効率が低下します。代表的な原因として、胃切除後や萎縮性胃炎が挙げられます。胃酸は鉄を吸収しやすい形に変える役割を担っており、胃酸分泌が低下すると鉄の吸収も障害されます。また、セリアック病や炎症性腸疾患などの小腸疾患も吸収不良の原因となります。さらに、制酸薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用によって胃酸分泌が抑制されることも、鉄吸収低下の一因とされています。鉄の吸収不良が疑われる場合には、単なる鉄補充だけでなく、背景にある消化管疾患や薬剤使用の有無を確認し、原因に応じた対応を行うことが重要です。

貧血の診断

貧血の診断は、まず血液検査によって行われます。一般的にはヘモグロビン値の低下をもって貧血と診断し、成人男性で13.0g/dL未満、成人女性で12.0g/dL未満が目安とされています。あわせて赤血球数やヘマトクリット値も確認し、貧血の程度を評価します。次に重要なのが、貧血の原因を推定することです。平均赤血球容積(MCV)を参考に、小球性、正球性、大球性に分類することで鑑別の手がかりとなります。小球性貧血では鉄欠乏性貧血、正球性貧血では慢性病貧血や溶血性貧血、大球性貧血ではビタミンB12や葉酸欠乏性貧血が疑われます。さらに、血清鉄、フェリチン、総鉄結合能、ビタミンB12、葉酸、網赤血球数などの検査を組み合わせて原因を絞り込みます。必要に応じて消化管出血の評価や骨髄検査を行うこともあります。貧血は背景疾患のサインであることも多く、総合的な評価が重要です。

1. 鉄剤(鉄欠乏性貧血)

鉄欠乏性貧血の治療の基本は、鉄剤による鉄補充です。鉄剤は不足している体内鉄を補い、ヘモグロビンの産生を回復させる目的で使用されます。経口鉄剤が第一選択となることが多く、継続的に内服することで、数週間から数か月かけて貧血の改善が期待されます。治療開始後は、ヘモグロビン値の改善だけでなく、体内の鉄貯蔵を回復させるため、貧血が改善した後もしばらく内服を継続することが重要です。一方で、悪心や腹部不快感、便秘、下痢などの消化管症状が副作用としてみられることがあります。経口鉄剤が使用できない場合や、吸収不良がある場合には、静注鉄剤が選択されることもあります。ただし、鉄剤治療と同時に、出血や吸収障害などの原因を明らかにし、根本的な治療を行うことが重要です。

2. ビタミンB12および葉酸(巨赤芽球性貧血、悪性貧血)

ビタミンB12または葉酸が不足すると、赤血球が正常に作れず、大きな未熟な赤血球(巨赤芽球)ができてしまうことがあります。これが巨赤芽球性貧血や悪性貧血の原因です。ビタミンB12や葉酸を補うことで治療します。例:シアノコバラミン(ビタミンB12製剤、メチコバール)、葉酸(フォリアミン)

3. エリスロポエチン製剤(腎性貧血など)

慢性腎不全などによる腎性貧血では、腎臓で作られるエリスロポエチンというホルモンが不足して、赤血球が十分に作られなくなります。エリスロポエチン製剤を投与することで赤血球の生成を促します。例:エポエチンアルファ(エスポー)、ダルベポエチンアルファ(ネスプ)

4. ステロイド薬(再生不良性貧血など)

再生不良性貧血や自己免疫性溶血性貧血などでは、骨髄での血球の生成が抑制されることがあります。ステロイド薬は、免疫系が血球の生成を阻害している場合に、これを抑制するために使われます。例:プレドニゾロン

5. 免疫抑制剤(再生不良性貧血)

再生不良性貧血では、免疫系が自己の骨髄を攻撃していることが原因となることがあり、その場合、免疫抑制剤が使用されます。例:シクロスポリン(ネオーラル)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)

6. ビタミンC

ビタミンCは鉄の吸収を促進するため、鉄欠乏性貧血の治療時に併用されることがあります。特に食事からの鉄分吸収を高めるために重要です。例:アスコルビン酸(ビタミンC)

7. 輸血(重度の貧血)

重度の貧血や急性の出血がある場合、赤血球が不足しているために輸血が必要になることがあります。特に出血性の貧血や再生不良性貧血の場合、輸血によって直ちに赤血球を補う治療が行われます。

8. その他の治療法

鉄キレート薬:鉄剤の過剰摂取や多血症による鉄過剰症がある場合、体内の鉄を排泄するために使用されることがあります。例:デフェロキサミン(デスフェラール)、デフェラシロクス(エクジェイド)

貧血の治療のポイント

貧血の治療は、まずその原因を特定し、それに応じた適切な薬物療法を行うことが重要です。鉄欠乏性貧血の場合は鉄剤が有効ですが、ビタミン不足が原因の貧血や腎性貧血などでは、それぞれ異なる治療が必要です。また、生活習慣の改善(食事のバランス、適度な運動)も貧血治療において重要な役割を果たします。しかし、すべての貧血がただちに治療を要するわけではありません。以下に、治療すべき貧血のタイプや状態をわかりやすくまとめます。


治療を要する貧血の判断ポイント

貧血が見つかった場合、すべてが直ちに治療を必要とするわけではありませんが、いくつかのポイントを踏まえて治療の要否を判断することが重要です。まず重要なのは、ヘモグロビン値の低下の程度です。数値が明らかに低い場合や、短期間で急激に低下している場合は、速やかな対応が必要となります。次に、自覚症状の有無と重症度を評価します。倦怠感、息切れ、動悸、めまいなどの症状が日常生活に支障をきたしている場合は、治療介入が望まれます。高齢者や心疾患を有する患者では、軽度の貧血でも症状が強く出ることがあり、注意が必要です。さらに、貧血の原因も重要な判断材料です。鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏による貧血は治療により改善が期待できますが、消化管出血や悪性疾患が疑われる場合には、原因検索と治療を優先する必要があります。また、慢性病貧血では基礎疾患のコントロールが重要となります。このように、数値、症状、原因を総合的に評価し、個々の患者に応じた治療方針を立てることが大切です。


治療すべき主な貧血の種類と理由】

貧血の種類特徴治療が必要な理由とタイミング
鉄欠乏性貧血最も頻度が高い。月経・消化管出血・妊娠・偏食が原因。原因の特定と鉄の補充が必要。放置すると疲労・めまい・心不全リスクあり。
再生不良性貧血骨髄が赤血球を作れない。命に関わる。早期に免疫抑制剤や造血幹細胞移植などの専門的治療が必要。
巨赤芽球性貧血(ビタミンB12・葉酸欠乏)菜食主義や消化吸収障害、アルコール依存などが原因。神経障害を伴うことがあり、早期補充が必要。
溶血性貧血赤血球が壊れやすい体質・病気。原因が自己免疫・薬剤・遺伝などであり、放置すると重症化。
二次性貧血(慢性病による)がん、慢性腎不全、関節リウマチなどが背景にある。貧血だけでなく基礎疾患の治療が不可欠。腎性貧血にはESA製剤などが使われる。
出血性貧血外傷、胃潰瘍、痔、月経過多などによる慢性出血。出血原因の検索と止血治療が重要。必要に応じて輸血。

貧血で放置すると危険なケース

貧血が見つかった場合、すべてが直ちに治療を必要とするわけではありませんが、いくつかのポイントを踏まえて治療の要否を判断することが重要です。まず重要なのは、ヘモグロビン値の低下の程度です。数値が明らかに低い場合や、短期間で急激に低下している場合は、速やかな対応が必要となります。次に、自覚症状の有無と重症度を評価します。倦怠感、息切れ、動悸、めまいなどの症状が日常生活に支障をきたしている場合は、治療介入が望まれます。高齢者や心疾患を有する患者では、軽度の貧血でも症状が強く出ることがあり、注意が必要です。さらに、貧血の原因も重要な判断材料です。鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏による貧血は治療により改善が期待できますが、消化管出血や悪性疾患が疑われる場合には、原因検索と治療を優先する必要があります。また、慢性病貧血では基礎疾患のコントロールが重要となります。



受診の目安

貧血はゆっくり進行することも多く、自覚症状が軽いために見過ごされがちですが、放置すると日常生活に支障をきたしたり、背景に重大な病気が隠れていることもあります。疲れやすさ、息切れ、動悸、めまい、立ちくらみといった症状が続く場合は、一度医療機関を受診することが勧められます。特に、以前よりも症状が強くなっている場合や、軽い動作でも症状が出る場合は注意が必要です。また、顔色が悪い、爪や唇が白っぽいと周囲から指摘された場合や、健康診断で貧血を指摘された場合も受診の目安となります。女性では月経量が多い、月経が長引くといった変化がある場合、男性や閉経後女性では消化管出血が原因となることもあるため、早めの評価が重要です。さらに、黒色便や血便、原因不明の体重減少、発熱などを伴う場合は、早急な受診が必要です。貧血は体からの重要なサインであることも多く、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談することが大切です。

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