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便秘薬の種類を作用機序にわけて説明します

便秘薬は、様々な製薬会社から出されています。便秘薬はそれぞれ作用が異なるため、便秘の原因や症状に合わせて選ぶことが大切です。まず便秘の種類について、説明します。

便秘の種類

弛緩性便秘:腸の運動が弱く、便をうまく送り出せないタイプ。食物繊維が少ない食生活や運動不足が原因になりやすいです。年齢が上がるにつれ増える傾向があります。

痙攣性便秘:腸が過剰に緊張しているため、便がスムーズに進まず、ウサギの糞のようなコロコロ便になることが多いです。ストレスが原因で起こることも。

直腸性便秘:便意を感じにくくなるタイプ。長時間座っていることが多い人や、便意を我慢しがちな人に多く見られます。

一般的には、弛緩性便秘、痙攣性便秘が多いでしょう。

便秘薬の種類

1. 刺激性下剤

作用:大腸の筋肉を刺激して、腸の運動を促進することで排便を促す。

例:センノシド、ピコスルファートナトリウムなど

注意点:長期間使用すると、腸が薬に依存して自然な排便ができなくなる可能性があります。

2. 浸透圧性下剤

作用:腸内に水分を引き寄せて便を柔らかくし、排便をスムーズにする。

例:酸化マグネシウム、ラクツロースなど。

特徴:比較的長期間使用しても腸に負担をかけにくいとされています。

3. 直腸性下剤

作用:肛門付近で直接的に便を柔らかくして排便を促す。

例:グリセリン浣腸など。

特徴:即効性があり、急な便秘の解消に使用されます。血圧低下のリスクがあるので、低血圧の方には好ましくありません。

4. プロバイオティクス

作用:腸内環境を整えて、自然な排便リズムを促進する。

例:酪酸菌、ビフィズス菌など。

特徴:日常的に使うことで腸内環境が改善され、便秘が軽減されることが期待されます。

その他の治療法

例えば慢性的な便秘には、食事や運動習慣などの生活習慣の改善が効果的な場合もあります。また、便秘の原因が他の疾患に関連している場合もあるので、その場合は原疾患の治療が最優先となります。

1. 食生活の改善

(1) 食物繊維を増やす

水溶性食物繊維(便を柔らかくする)

オートミール、果物(バナナ、りんご、柑橘類)、野菜(オクラ、ブロッコリー)、海藻。

不溶性食物繊維(腸の動きを促す)

全粒穀物、豆類、根菜(ごぼう、さつまいも)、葉野菜。

注意:

食物繊維を急に増やすとお腹が張ることがあるため、少しずつ増やすのがポイントです。


(2) 水分を十分に摂る

目安:1日1.5~2リットル(汗をかく量や活動量に応じて増やす)。

特に、朝起きたときにコップ1杯の水を飲むと腸が刺激されて動きやすくなります。


(3) 発酵食品を摂る

ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ、ぬか漬けなど。
→ 腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。


(4) 油脂を適度に摂る

オリーブオイルやアボカドなど、健康的な脂肪を摂ることで腸内を滑らかにします。


2. 運動の習慣を取り入れる

ウォーキング
1日30分程度の歩行が腸を刺激し、動きを促します。

腹筋運動
腹筋を鍛えると腸の蠕動運動が活発になります。

ヨガやストレッチ
腹部をねじるポーズや前屈のポーズが腸に刺激を与えます。


3. 排便習慣を整える

決まった時間にトイレに行く
特に朝食後は腸の動きが活発になるため、排便のチャンスです。

無理に力まず、自然に任せる
強くいきむと痔の原因になるため、リラックスして行うことが重要です。


4. マッサージで腸を刺激する

お腹のマッサージ
手のひらでおへそを中心に時計回りにやさしく押し回す。
→ 腸の動きを助けます。


5. ストレスを減らす

ストレスは腸の動きを鈍らせる原因になります。

リラクゼーション(深呼吸、瞑想)、趣味や気分転換の時間を持つ


6. 十分な睡眠を確保する

  • 睡眠不足は自律神経を乱し、腸の動きを悪くします。毎日規則正しい時間に寝起きすることが大切です。

7. 自然な刺激を与える飲み物を利用する

温かい飲み物
朝に白湯や温かいお茶を飲むと腸が刺激されます。

プルーンジュースやオリゴ糖入り飲料
腸内環境を整える作用があります。


8. 習慣に取り入れると良いこと

食後に軽く体を動かす
食後にすぐ横になるのではなく、軽い散歩をすると腸の動きが促進されます。

食べるときはよく噛む
消化を助け、腸への負担を減らします。

適切な便秘の治療法

一般的に現場では、1の刺激性下剤、2の浸透圧性下剤が使用されることが多いです。弛緩性便秘に対しては刺激性下剤、痙攣性便秘に対しては浸透圧性下剤を選択します。1剤でも便秘症状が改善しない場合、便秘薬を複数組み合わせます。

便秘が長期間継続する場合は、薬に頼らず生活習慣や食事の見直しも重要です。また特に妊娠中の方や高齢者は、刺激の強い下剤の使用は避け、浸透圧性下剤や膨張性下剤のような比較的マイルドなものを選びましょう。

適切な便秘薬の選択と、生活習慣の見直しで腸の健康を保つことを心がけましょう。


しかしたかが便秘といえど、重大な病気が背景に隠れている可能性があります。

1. 消化器系の病気

疾患名解説
大腸がん・直腸がん腫瘍が便の通り道をふさぎ、便秘になることがあります。便が細くなる・血便が出る場合も。
過敏性腸症候群(IBS)ストレスなどが原因で腸の動きが乱れ、便秘型IBSとなることがあります。
腸閉塞(イレウス)腸の内容物が通れなくなり、ガスも便も出なくなります。激しい腹痛や嘔吐を伴います。
慢性便秘症明確な器質的異常がなくても、排便習慣の乱れや腸の動きの低下で慢性的な便秘になります。

2. 内分泌・代謝性疾患

疾患名解説
甲状腺機能低下症(橋本病など)新陳代謝が低下して腸の動きが鈍くなり、便秘がちになります。
糖尿病自律神経障害により腸の蠕動運動が低下することがあります。
高カルシウム血症腸の動きが低下し、便秘や食欲不振が起こります。副甲状腺機能亢進症などで起こることがあります。

3. 神経・筋疾患

疾患名解説
パーキンソン病自律神経の異常により、便秘がよく見られます。
脊髄小脳変性症筋肉の運動障害や神経障害のために、排便が困難になることがあります。
多発性硬化症、ALSなど排便に関わる筋力や神経が障害され、便秘になることがあります。

4. 精神・薬剤性

疾患・原因解説
うつ病活動性の低下や自律神経のバランス異常により、便秘になることがあります。
抗コリン薬、抗うつ薬、麻薬性鎮痛薬(オピオイド)副作用として腸の蠕動を抑えるため、便秘を引き起こします。
鉄剤・カルシウム製剤錠剤によって便が硬くなったり、腸の動きが抑制されることがあります。

5. その他の疾患・状態

疾患・状況解説
妊娠ホルモンの影響と子宮による腸の圧迫で便秘が起こります。
高齢者腸の運動が低下し、排便力も弱くなるため便秘がちになります。
脱水・食物繊維不足腸内の水分が足りないと便が硬くなって排出しにくくなります。

見落としがちな疾患

  • 潰瘍性大腸炎・クローン病(便秘型のこともあり)
  • 自律神経失調症
  • 子宮筋腫(腸を圧迫)
  • 便秘性腸疾患(結腸無力症など)
  • 巨大結腸症(ヒルシュスプルング病)

こんな症状があれば注意!

  • 血便や黒色便がある
  • 急に便秘がひどくなった
  • 腹部膨満や嘔吐がある
  • 排便してもすっきりしない
  • 細い便が続く

これらの症状は、大腸がんや腸閉塞などの器質的疾患が隠れている可能性があるため、早めの受診が必要です。

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