痙攣(けいれん)の原因と治療法は?
痙攣(けいれん)の原因は多岐にわたりますが、筋肉や神経系の異常によって引き起こされることが一般的です。以下に主な原因を挙げ、治療薬についても説明します。
痙攣とは
筋肉が自分の意思とは関係なく急激に収縮すること を「痙攣」といいます。
持続的または断続的に起こり、体が突っ張ったりガクガク震えたりするのが特徴です。
痙攣の種類
- 全身性痙攣
- 体全体が硬直したり、ガクガク大きく揺れる
- 代表:てんかんの全般発作、高熱による熱性けいれん
- 部分性痙攣
- 手や足など、体の一部だけがけいれんする
- 意識が保たれる場合と失われる場合がある
- 持続性の痙攣(痙攣重積状態)
- 数分以上けいれんが続き止まらない状態
- 救急対応が必要(脳の障害や呼吸停止の危険
痙攣の原因
a 筋肉に関する原因
- 筋肉の疲労
激しい運動や長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の過労。
- 脱水症状
体内の水分不足が筋肉の収縮と弛緩に影響を及ぼします。
- 電解質異常
カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの不足やバランスの乱れ。
b 神経系に関連する原因
てんかんとは、神経の過剰な興奮により起こるてんかん発作と発作間欠時を繰り返す疾患です。発作の型と原因により「特発性部分てんかん」「特発性全般てんかん」「症候性部分てんかん」「症候性全般てんかん」の4つに分類されます。小児と高齢者によく見られる疾患ですが、幅広い年齢層で発症する点が特徴です。てんかん発作時には、身体の一部の痙れん、過呼吸、急激な筋収縮、意識消失などさまざまな症状が見られます。いずれの発作も数秒から5分程度、長くても30分程度で治まることが大半です。
- 中枢神経系の損傷や疾患
脳梗塞、脳炎、外傷などが原因になる場合があります。
- 神経障害
末梢神経障害や特定の神経の圧迫(例:坐骨神経痛)。
c 代謝や内分泌の問題
- 低血糖
血糖値が急激に低下すると、けいれんが起こることがあります。
- 甲状腺機能異常
ホルモンバランスが乱れると神経や筋肉に影響を及ぼす。
- 腎臓や肝臓の異常
体内の老廃物が適切に排泄されず、神経筋系に影響を及ぼす。
d 外的要因や薬剤の影響
- 薬剤副作用
特定の薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬など)が原因の場合があります。
- アルコールや薬物中毒
神経や筋肉に悪影響を及ぼす。
- 毒素や化学物質
特定の毒素に曝露されることでけいれんを引き起こす場合も。
e 病的状態やその他の原因
- 感染症
高熱や特定の感染症(破傷風、髄膜炎など)がけいれんを引き起こす。
- 血管障害
血流が阻害されることで神経や筋肉に影響を与える。
- 心理的ストレス
強いストレスやパニックがけいれんを誘発する場合も。
痙攣の治療薬
a てんかんや発作に対する薬
これらの薬は神経系の過剰な興奮を抑える作用があります。
- ベンゾジアゼピン系(即効性)
例:ジアゼパム(ダイアップ、セルシン)、ロラゼパム(アタラックス)
- 急性発作やけいれん重積(発作が止まらない場合)に使用されることが多い。
- 抗てんかん薬(長期治療)
例:カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(ケプラ)
b 筋肉のけいれんに対する薬
これらは筋肉の異常収縮を緩和するために使用されます。
- 筋弛緩薬
例:エペリゾン(ミオナール)、メトカルバモール(ロバキシン)
- 鎮痛消炎薬(付随する痛みを緩和)
例:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。
c 電解質補正薬
電解質の異常による痙攣には補正が必要です。
- カルシウム補充薬
低カルシウム血症の場合に使用されます。
- マグネシウム補充薬
低マグネシウム血症や妊娠中毒症に伴うけいれんに適応。
- カリウム補充薬
低カリウム血症が原因の場合に投与します。
d その他の特定の治療薬
- 破傷風によるけいれん
ジアゼパムのほか、破傷風免疫グロブリンや抗生物質が併用されます。
- てんかん以外の神経系疾患(例:脳梗塞後)
抗てんかん薬や中枢性筋弛緩薬を使用します。
- 心理的要因によるけいれん
抗不安薬や抗うつ薬が使用される場合があります。
抗てんかん薬の選び方
1. 発作の種類に合わせる
- 部分(焦点)発作
→ カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、ゾニサミド など
- 全般発作(強直間代発作、欠神発作、ミオクローヌス発作など)
→ バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート など
- 欠神発作
→ バルプロ酸ナトリウム、エトサクシミド
⚠️ 発作型に合わない薬を使うと、かえって発作が悪化することがあるため注意が必要です。
2. 患者さんの背景で調整
- 年齢
小児 → 成長・発達への影響が少ない薬を選ぶ
高齢者 → 眠気・ふらつきが少ない薬を選ぶ
- 女性(妊娠を希望する場合)
バルプロ酸は催奇形性が強いため避ける → ラモトリギンなどを優先
- 合併症
肝障害 → 腎排泄型の薬(レベチラセタムなど)を選ぶ
腎障害 → 肝代謝型の薬(バルプロ酸など)を選ぶ
3. 副作用の特徴で選ぶ
- 眠気、ふらつき(フェニトイン、フェノバルビタールなど)
- 体重増加(バルプロ酸)、体重減少(トピラマート)
- 発疹(カルバマゼピン、ラモトリギン)
- 精神症状(レベチラセタム)
- 催奇形性(バルプロ酸)
4. 実際の処方の流れ
- 発作型・てんかん症候群を診断する
- それに合った第一選択薬を少量から開始
- 効果をみながら増量(単剤療法が原則)
- 効かない・副作用が強い場合に他剤へ切り替え、または併用
目の前で痙攣が起きたときの対処法
1. 落ち着いて見守る
- 発作中は焦らず、周囲の安全を確保
- 周囲に硬いものや角のある物がないか確認
2. 体を保護する
- 頭を柔らかい枕や服で支える
- ベッドや床に頭をぶつけないようにする
- 発作中に無理に手足を押さえない
3. 呼吸の確保
- 仰向けの場合は首を少し横に向け、気道を確保
- 嘔吐物があれば、口の横に手を添えて吐物を出やすくする
- 口の中にものを入れない(歯や舌を噛む危険がある)
4. 時間を測る
- 痙攣が 5分以上続く場合は救急要請
- それ以下でも、初めての発作や重い症状を伴う場合は受診
5. 発作後の対応
- 意識が戻るまでそばで安静に見守る
- ゆっくり起こす
- 発作後は眠気・混乱が出ることがあるため、転倒などに注意
5. 緊急受診が必要な場合
- 痙攣が5分以上続く
- 何度も連続して起こる
- 呼吸が止まったり、顔色が悪くなる
- 発熱・頭痛・嘔吐などを伴う
- けがをしている
痙攣が起きたときは何科を受診すれば良いか
1. 脳神経内科
- 脳や神経の異常による痙攣を評価
- 脳波検査、画像検査(MRI・CT)で原因を特定
2. 小児の場合
- 小児科でも初回評価可能
- 必要に応じて小児神経科に紹介
3. 場合によっては内科や救急科
- 発熱や全身症状を伴う場合 → 内科・救急科で一次対応
- 代謝異常や電解質異常(低血糖・低カルシウム)などが原因のこともある
4. 受診時に伝えるべき症状
- 発作が始まった時間・持続時間
- 発作中の動きや症状(意識の有無、口の動き、手足の動きなど)
- 前後の症状(だるさ、頭痛、吐き気など)
- 過去の病歴・服薬状況
初期評価
- 診察・問診
- 検査
- 血液検査:電解質、血糖、肝腎機能
- 脳波(EEG):異常放電の有無を確認
- 画像検査(MRI/CT):脳梗塞・脳腫瘍・外傷の確認
痙攣で脳神経内科を受診したとき、どのような処置がされるか
1.てんかんの場合
- 抗てんかん薬を投与
- 発作型に合わせた薬を選択
- 単剤療法を基本に、効果・副作用を確認しながら調整
2. 代謝異常や薬剤性の場合
- 原因を修正する
- 低血糖 → ブドウ糖投与
- 電解質異常 → カルシウム・ナトリウム補正
- 薬剤の中止・調整
3.急性の全身性痙攣(てんかん重積状態)
- 救急処置が必要
- 気道確保、酸素投与
- 点滴による抗痙攣薬(例:ロラゼパム静注)
- 状況に応じて入院・集中管理
4.生活・再発予防の指導
- 発作の誘因(睡眠不足、過度のストレス、アルコールなど)を避ける
- 薬の自己中断は避ける
- 発作時の安全対策(家族への対応指導)