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脊髄小脳変性症を描いた1リットルの涙、どんな病気?

1リットル涙というドラマをご存知でしょうか。2005年に沢尻エリカさんが主演された、脊髄小脳変性症という病気に関するドラマです。筆者も当時よく見ていました。

https://tver.jp/series/sriobyltm6

平和な家庭に生まれ育った高校生の女の子が日常生活でよくつまずくようになり、病院で検査をした結果、脊髄小脳変性症と診断され、徐々に病気が進行して出来ることが少なくなって25歳で亡くなってしまうストーリーです。

実はこのドラマで描かれる脊髄小脳変性症は、あまり一般的な例ではないと思います。その理由を今回お話しようと思います。

脊髄小脳変性症とは、遺伝性があるものとないものがあります。脊髄小脳変性症の中で前者が約1/3、後者が約2/3です。遺伝性がある脊髄小脳変性症は、常染色体優性遺伝という遺伝形式なので、高確率(約50%)の確率で次の世代に遺伝します。つまり親が脊髄小脳変性症、もしくはそう診断されてはいないが車椅子に乗っていることがほとんどです。また遺伝性のある脊髄小脳変性症は、発症年齢が30〜50歳が多いです。ただ本病気の罹患世代数が多い場合、その好発年齢より若い時に発症しやすく症状の進行も早いです。また若年で発症するケースは、知的障害も併発することが多いです。遺伝性のない脊髄小脳変性症も、発症の後発年齢が40〜60歳です。喫煙やアルコール多飲をしていると若年に発症することもあるようですが、基本的には中年と言われる年齢で発症します。

https://www.prd-journal.com/article/S1353-8020(19)30306-2/abstract

このドラマでは、主人公は知的障害はなく、両親は脊髄小脳変性症でもなく車椅子でもないので、主人公は遺伝歴のない脊髄小脳変性症と考えられます。そして高校生だから喫煙や飲酒はしていないでしょうし、発症年齢はあまりに若いです。

作品では高校生の主人公が脊髄小脳変性症に罹患し、症状の進行が早く、発症から10年ほどで亡くなってしまうミゼラブルな情景が描かれています。しかしこれは稀なケースであることを知っていただきたいと思います。

脊髄小脳変性症とは

脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう、SCDS)は、神経系に影響を与える進行性の病気のグループです。脊髄小脳変性症は、特に小脳や脊髄、またはこれらに関係する神経系の部分がダメージを受けることによって引き起こされます。これらの部位は、身体の運動や協調性を制御する役割を担っているため、病気の進行に伴い運動機能に問題が生じます。

主な特徴

  • 小脳の障害: 小脳は運動の調整に重要な役割を果たしており、脊髄小脳変性症においては、この部位に変性が生じるため、運動の協調性やバランスが障害されます。
  • 運動失調: これは、協調的な動きができなくなる症状で、歩行や手の動きに支障をきたします。
  • 筋力低下や反射の異常: 進行すると、筋力が低下したり、反射が鈍くなったりすることがあります。
  • 視力や言語、嚥下障害: 小脳や脊髄に影響を与える進行的な病気では、視覚や発語、飲み込みに関する障害も見られることがあります。

原因

脊髄小脳変性症にはいくつかのタイプがありますが、主に以下の要因が関係しています:

  1. 遺伝的要因: いくつかの脊髄小脳変性症は遺伝性であり、家族内で遺伝することがあります。例えば、遺伝性のものである「進行性小脳変性症」や「脊髄小脳変性症1型」などがあります。
  2. 環境要因や後天的な要因: 特定のウイルス感染や免疫系の異常など、環境的な要因が関与することもあります。

診断

脊髄小脳変性症は、医師が以下の方法を用いて診断します:

  • 神経学的検査: 症状に基づいて運動機能や感覚をチェックします。
  • MRI(磁気共鳴画像): 小脳や脊髄の構造を画像で確認することで、変性があるかどうかを調べます。
  • 遺伝子検査: 遺伝性の疾患である場合、特定の遺伝子変異を調べることがあります。

治療

現時点では、脊髄小脳変性症に対する根治的な治療法はありませんが、症状の緩和や進行を遅らせるための治療が行われます。

  • 理学療法や作業療法: 運動機能の維持や改善を目指すリハビリテーションが重要です。
  • 薬物療法: 痛みや筋肉のこわばりを軽減する薬物が使用されることがあります。
  • 対症療法: 言語療法や嚥下療法を通じて、コミュニケーションや食事の摂取をサポートします。

予後

脊髄小脳変性症は進行性の病気であり、症状が時間とともに悪化することが多いですが、進行の速度は個人差があります。早期に治療を開始し、生活の質を保ちながら進行を遅らせることが重要です。


脊髄小脳変性症は進行の度合いによりますが、医療費や家族の負担が大きくなってきます。しかし現在は医療助成、福祉支援が充実しており、これらの負担は従来より軽くなっているでしょう。

医療助成・福祉支援の主な制度

① 特定医療費(指定難病)医療費助成制度

指定難病として認定されると、「特定医療費(指定難病)受給者証」が発行され、医療費自己負担が原則3割から2割に軽減されます 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+11全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+11LITALICO発達ナビ+11

2023年10月から、助成開始時期の前倒しも可能になりました 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会

高価な薬剤(例:セレジストなど)を使用した場合でも、一定の条件(「軽症高額該当」など)に該当すれば助成対象となります brain-gr.com+2全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+2medical.mt-pharma.co.jp+2

② 身体障害者手帳

運動障害などの進行により、身体障害者手帳の取得対象となります。これにより、補装具交付、公共交通割引、税制優遇、医療費助成などが受けられます LITALICO発達ナビ+4全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+4CUC-HOSPICE+4

等級(1〜3級)によって助成内容が異なり、重度(1〜2級)では医療費が完全無料となるケースもあります brain-gr.com

③ 介護保険制度

通常65歳以上が対象の介護保険が、脊髄小脳変性症では40歳以上から利用可能(第2号被保険者)です 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+11LITALICO発達ナビ+11全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+11

訪問介護、福祉用具貸与、通所リハビリなど幅広いサービスが利用できます。医療保険を使っての訪問リハビリも可能です brain-gr.com+1CUC-HOSPICE+1

④ 障害者総合支援法(39歳以下対象)

40歳未満の方には、介護保険ではなく障害者総合支援法に基づくサービスが利用可能です。就労支援、移動支援、補装具支給などが含まれます CUC-HOSPICE+2全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+2LITALICO発達ナビ+2

⑤ 高額療養費制度

医療費の自己負担が所得別の上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。限度額認定証の提示により窓口負担を軽減可能 scd-msa.netCUC-HOSPICE

⑥ 傷病手当金・失業手当

病気のために職場に休職した場合、健康保険の「傷病手当金」や雇用保険の「失業手当」が受給できる可能性があります 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会+1CUC-HOSPICE+1

⑦ 障害年金(基礎年金・厚生年金)

65歳未満で障害等級に該当する場合、「障害基礎年金」や「障害厚生年金」を受給できます scd-msa.net+1CUC-HOSPICE+1

⑧ 重度心身障害者医療費助成

自治体によっては身体障害者手帳の1〜3級相当の方に医療費の公費助成を行っている場合があります 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会CUC-HOSPICE


支援まとめ

制度名対象主な支援内容
特定医療費助成指定難病患者医療費自己負担の軽減(2割負担)
身体障害者手帳障害等級に該当する人医療費助成、交通割引、税控除など
介護保険制度40歳以上の患者訪問介護・リハビリ・福祉用具など
障害者総合支援法40歳未満の患者移動支援、就労支援、補装具など
高額療養費制度医療費が高額の場合医療費の払い戻し(限度額超過分)
傷病手当・失業手当就労できない場合収入減への支援
障害年金障害等級該当者年金給付
重度障害者医療費助成手帳1〜3級に該当医療費の軽減・免除

まとめ

脊髄小脳変性症を疑ったら、まず脳神経内科専門医の外来を受診して診察を受けるべきです。もし脊髄小脳変性症と診断されたら、各種医療助成、福祉支援を受けることを検討すると良いです。その際に、医師が作成する書類が必要なことも多いので、都度担当医や有識者と相談をしていきましょう。

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