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尿酸は高いと痛風になりますが、低いとどうなるのか?

よく尿酸が高いと痛風になる、といいますが、尿酸が低いと何か悪いことが起きるのでしょうか?まず尿酸とは何かを説明していきます。

尿酸とは

尿酸はプリン体の代謝産物です。
プリン体は、体内の細胞の核酸(DNA・RNA)の一部や、食べ物(特に肉・魚・アルコールなど)に含まれています。
プリン体が分解される最終段階で生じるのが「尿酸」です。


体内での扱い

  1. 産生:肝臓を中心にプリン体から作られる。
  2. 排泄:腎臓から尿に出る(約7割)、腸から便として排泄(約3割)。

正常なバランスでは、作られる量と排泄される量が釣り合っています。


尿酸値(血中尿酸濃度)

血液中の尿酸の濃度を「尿酸値」と呼びます。

正常値:おおむね 3.6〜7.0 mg/dL(成人男性)

7.0 mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。


尿酸が高いとどうなる?

結晶化する
尿酸は水に溶けにくいため、濃度が高すぎると血液中や関節に結晶として沈着します。

主な病気

  • 痛風:関節に尿酸結晶が沈着 すると炎症を起こし、激しい痛みを認める。
  • 尿路結石:腎臓や尿路に結晶が石となって詰まる。
  • 腎障害:尿酸の沈着で腎臓が障害される。

尿酸が高くなる原因

  • プリン体の摂りすぎ(肉・魚・アルコール)
  • 尿酸の排泄低下(腎機能低下、遺伝的体質)
  • 肥満・生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症)
  • 脱水(汗をかく、アルコールで水分不足)

対策

  • 食事:プリン体を多く含む食品やアルコールを控える
  • 水分:1日2ℓ程度を目安にしっかり摂取
  • 運動:肥満改善、代謝促進
  • 薬物療法:尿酸の産生を抑える薬(アロプリノールなど)、排泄を促す薬(ベンズブロマロンなど)

ここまで尿酸の概要をお話しました。健康診断で「尿酸が高い」と指摘されたことがある方、多いのではないでしょうか。尿酸が高いとは尿酸値が7.0 mg/dL以上、尿酸が低いとは2.0 mg/dL以上のことを言います。尿酸が高いと痛風になりやすいことは、結構有名だと思います。では尿酸が低いと、何か悪いことはあるのでしょうか。解説していこうと思います。

尿酸が低いとは?

  • 一般に 血清尿酸値 2.0 mg/dL未満 を「低尿酸血症」といいます。
  • 男性より女性にやや多いです。

尿酸が低い原因

① 尿酸の産生が少ない

先天性の酵素異常(まれ)
・キサンチン尿症(プリン体を尿酸に変える酵素の欠損 → 尿酸が作れない)


② 尿酸が排泄されすぎる

尿酸排泄過剰型

  • 遺伝的に尿酸を多く排泄する体質
  • 腎尿細管の異常(尿酸を再吸収できない)→腎臓の近位尿細管に存在するGLUT9/SLC2A9遺伝子変異もしくはURAT1/SLC22A12遺伝子に変異があると尿酸の再吸収が不可能となり、その結果血液中の尿酸値は低下します。このような方は、全人口の0.3%前後と言われています。
  • 薬の影響(尿酸排泄を促進する薬:プロベネシド、サリチル酸、ロサルタンなど)
  • 妊娠(腎からの尿酸排泄が増える)

③ その他の要因

  • SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)などで水分過剰 → 尿酸が希釈される
  • 悪性腫瘍や造血器疾患での代謝異常
  • 激しい運動後や点滴による希釈性低下

低尿酸血症で問題になること

多くは無症状です。しかし一部で、尿路結石キサンチン結石)、運動後急性腎障害(EIAKI)を認めることがあります。


運動後急性腎障害について

運動後急性腎障害とは、名前の通り運動をした後に腎臓の障害を認めることです。脱水や解熱鎮痛剤の内服をしていると、よりそれが起こりやすくなります。典型的な症状は、運動して数時間後の腰背部痛、嘔気、嘔吐です。ほとんどのケースは2〜4週間ほどで自然に改善しますが、再発する例もあります。尿路結石の典型的症状は、腰背部痛、血尿です。尿路結石となった場合、鎮痛剤で経過を見ることが多いですが、病態や症状によっては手術となることがあります。
尿酸が低いことによる合併症は、医療従事者の中でもそこまで有名ではありません。この記事をきっかけに周知されたら良いと思っています。

参考:腎性低尿酸結晶診療ガイドライン

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