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胃腸炎

胃腸炎について

胃腸炎は、胃や腸に炎症が起こることで、下痢や嘔吐、腹痛などの消化器症状を引き起こす病気の総称です。日常診療でよくみられる疾患の一つで、子どもから高齢者まで幅広い年代に発症します。多くは急性に発症し、適切に対応すれば数日から1週間程度で改善しますが、脱水などに注意が必要です。原因として最も多いのはウイルス感染です。ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどが代表的で、特に冬季に流行しやすい傾向があります。これらは汚染された食品や水、あるいは感染者の便や嘔吐物を介して感染します。ほかにも、細菌や寄生虫が原因となることがあり、加熱不十分な食品や衛生環境が関与する場合があります。主な症状は、下痢、嘔吐、腹痛、吐き気などで、発熱や全身のだるさを伴うこともあります。下痢は水のような便になることが多く、回数が増えることで脱水を起こしやすくなります。嘔吐が強い場合は、食事や水分がとれず、症状が悪化することもあります。乳幼児や高齢者では、少量の下痢や嘔吐でも脱水が進行しやすいため注意が必要です。診断は、症状や発症の経過、周囲の流行状況などから行われることが一般的です。多くの場合、特別な検査は行わず、重症例や集団発生が疑われる場合に便の検査などが実施されます。血便や高熱がある場合には、他の疾患との鑑別が必要となります。

胃腸炎の治療は、原因にかかわらず脱水を防ぎ、症状が自然に改善するのを支えることが基本となります。多くの胃腸炎はウイルスが原因であり、特別な治療を行わなくても数日で回復しますが、適切な対応が重要です。治療の中心は水分補給です。下痢や嘔吐によって水分と電解質が失われやすいため、少量ずつこまめに補給します。経口補水液は、体に吸収されやすい成分バランスになっており、脱水予防に有効です。嘔吐が強い場合は、スプーン1杯程度から始めるなど工夫が必要です。薬物療法は症状に応じて行われます。吐き気や嘔吐が強い場合には制吐薬、腹痛が強い場合には鎮痙薬が用いられることがあります。下痢止めは、ウイルスや細菌を体外に排出する働きを妨げる可能性があるため、原則として慎重に使用されます。細菌感染が疑われ、症状が重い場合には抗菌薬が使用されることもあります。食事は、症状が落ち着くまでは無理にとらず、回復に合わせて再開します。再開時には、おかゆやうどんなど消化のよいものを少量から始めます。脂っこい食事や刺激の強い食品は避けることが望まれます。安静も重要な治療の一つです。十分な休養をとり、体力の回復を待つことが回復を早めます。乳幼児や高齢者では脱水が進みやすいため、症状が強い場合や水分がとれない場合には早めの受診が勧められます。