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重症筋無力症

重症筋無力症について

重症筋無力症は、神経と筋肉の情報伝達がうまく行われなくなることで、筋力低下や疲れやすさを生じる自己免疫性の神経筋疾患です。特徴的なのは、同じ動作を繰り返すと筋力が低下し、休息するとある程度回復するという「易疲労性」です。眼や顔、手足、呼吸に関わる筋肉など、全身のさまざまな筋肉が影響を受けます。この病気では、神経から筋肉へ信号を伝える接合部に対して、免疫の異常が起こります。多くの場合、アセチルコリン受容体や関連する分子に対する自己抗体が作られ、神経伝達が妨げられます。その結果、筋肉に十分な刺激が伝わらず、筋力が発揮しにくくなります。原因は完全には解明されていませんが、免疫の調整に関わる胸腺の異常が関与していることが知られています。症状として最も多いのは眼の症状で、まぶたが下がる眼瞼下垂や、物が二重に見える複視が初発症状となることがあります。進行すると、話しにくさや飲み込みにくさ、表情が乏しくなるといった球症状や、手足の筋力低下が現れます。重症化すると呼吸筋が障害され、呼吸不全を起こすことがあり、これは重症筋無力症クリーゼと呼ばれ、緊急対応が必要となります。重症筋無力症は、若年成人と高齢者に発症のピークがあり、男女差や年齢によって臨床像が異なることがあります。症状の出方や重症度には個人差が大きく、眼の症状にとどまる場合もあれば、全身の筋力低下に進展する場合もあります。病気の経過は慢性的で、増悪と改善を繰り返すことが特徴です。治療の進歩により、現在では多くの患者で症状のコントロールが可能となっています。適切な診断と治療、日常生活での配慮を行うことで、生活の質を保ちながら長期的に経過をみることができます。重症筋無力症は早期発見と継続的な管理が重要な疾患といえます。

重症筋無力症の治療は、症状の軽減と日常生活の維持を目的として行われます。病態には自己免疫の異常が関与しているため、神経と筋肉の情報伝達を改善する治療と、免疫反応を抑える治療を組み合わせて進められます。症状の程度や年齢、合併症に応じて治療法が選択されます。基本となるのは、神経筋接合部での伝達を補う薬物療法です。抗コリンエステラーゼ薬は、神経から放出されるアセチルコリンの分解を抑え、筋肉への刺激を強めることで筋力低下を改善します。比較的速やかに効果が現れるため、初期治療として用いられることが多い薬剤です。症状が十分に改善しない場合や全身症状が強い場合には、免疫を抑制する治療が行われます。副腎皮質ステロイドは炎症や自己免疫反応を抑える効果があり、重症筋無力症の治療に広く用いられています。長期使用による副作用に注意しながら、用量を調整して使用されます。また、ステロイド以外の免疫抑制薬が併用されることもあります。胸腺の異常が認められる場合には、胸腺摘出術が検討されます。胸腺腫がある場合は手術が原則となり、腫瘍がない場合でも、症状の改善や薬の減量につながることがあります。効果はすぐに現れないことが多く、長期的な経過の中で評価されます。重症化して呼吸や嚥下に影響が出た場合には、血漿交換療法や免疫グロブリン療法が行われます。これらは体内の自己抗体を一時的に減らす治療で、急性増悪時や手術前の管理として用いられます。重症筋無力症の治療は長期的な管理が必要であり、医療と生活面の調整を組み合わせて行うことが重要です。適切な治療により、多くの患者が安定した生活を送ることが可能となっています。

重症筋無力症が疑われる場合は、脳神経内科を受診することが適切です。診断には、神経学的診察に加え、血液検査や筋電図検査、薬剤反応を見る検査などが行われます。原因や重症度を評価したうえで、治療方針が決定されます。まぶたの下垂や筋力低下が続く場合は、早めに脳神経内科で専門的な診療を受けることが大切です。適切な診断と治療により、日常生活の安定が期待できます。