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いろいろある糖尿病薬、どれが良いのかわからない!薬を種類別に解説していきます。

糖尿病の治療薬は、現在さまざまな種類があり、経口薬だけでもビグアナイド系、スルホニル尿素系、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬など多岐にわたります。さらに注射薬としてGLP-1受容体作動薬やインスリン製剤もあります。これほど多くの選択肢があると、「どの薬を選べばよいのか」と悩む方も少なくありません。薬の選択は、単に血糖を下げる効果だけでなく、患者さんの年齢、合併症の有無、腎機能、体重、生活習慣など、個々の状況に応じて行うことが重要です。また、薬ごとに副作用や服薬のしやすさ、食事・運動との相性も異なります。本記事では、糖尿病治療薬の種類ごとの特徴と選び方のポイントをわかりやすく解説し、患者さんに最適な治療法を考える参考にしていただきます。

目次

色々な種類がある糖尿病治療薬、どれを選ぶべき?

糖尿病の治療薬は、現在さまざまな種類があり、経口薬だけでもビグアナイド系、スルホニル尿素系、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬など多岐にわたります。さらに注射薬としてGLP-1受容体作動薬やインスリン製剤もあります。これほど多くの選択肢があると、「どの薬を選べばよいのか」と悩む方も少なくありません。薬の選択は、単に血糖を下げる効果だけでなく、患者さんの年齢、合併症の有無、腎機能、体重、生活習慣など、個々の状況に応じて行うことが重要です。また、薬ごとに副作用や服薬のしやすさ、食事・運動との相性も異なります。本記事では、糖尿病治療薬の種類ごとの特徴と選び方のポイントをわかりやすく解説し、患者さんに最適な治療法を考える参考にしていただきます。


1. ビグアナイド系(メトホルミン)

メトホルミンは、2型糖尿病の治療において最も基本的かつ広く使用されている薬です。ビグアナイド系に分類され、血糖を下げる効果がありながら、低血糖を起こしにくいという特徴があります。主な作用は、肝臓での糖新生を抑え、血糖の上昇を防ぐことです。また、筋肉や脂肪組織でのインスリン感受性を高め、血中のブドウ糖が細胞に取り込まれやすくすることで、インスリン抵抗性を改善します。

メトホルミンは体重を増やしにくく、むしろ体重減少や脂質代謝の改善効果も期待できるため、肥満を伴う糖尿病患者に適しています。また、心血管疾患リスクを下げる可能性も報告されており、長期的な健康維持に寄与すると考えられています。一方で、副作用として消化器症状が起こることがあり、特に服用開始初期にみられます。まれに乳酸アシドーシスという重篤な副作用があるため、腎機能が低下している患者では慎重に使用する必要があります。


2. スルホニル尿素系(SU薬)

スルホニル尿素系薬(SU薬)は、古くから使われている糖尿病治療薬で、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促すことで血糖を下げる薬です。代表的な薬剤には、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなどがあります。これらは、インスリン分泌能がある程度保たれている2型糖尿病患者に有効で、即効性があり血糖をしっかり下げる力が強いのが特徴です。

しかし、SU薬の欠点として、インスリンを強制的に分泌させるため、低血糖を起こしやすい点が挙げられます。特に高齢者や食事量が不安定な人では注意が必要です。また、長期的な使用によりβ細胞の疲弊を招き、効果が徐々に減弱することもあります。さらに、体重が増えやすくなる傾向もあります。そのため、最近では他の薬剤と併用して少量を使用するケースが増えています。

SU薬は、血糖コントロールを早期に改善したい場合や、費用面を重視する患者にも適していますが、低血糖リスクや体重増加を防ぐため、用量調整や食事とのバランスが重要です。

3. DPP-4阻害薬

DPP-4阻害薬は、近年広く使われている2型糖尿病治療薬の一つで、GLP-1やGIPというホルモンの働きを高めることで血糖を下げます。インクレチンは、食事を摂ると腸から分泌され、膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進し、同時にα細胞からのグルカゴン分泌を抑える作用を持ちます。DPP-4阻害薬は、このインクレチンを分解する酵素「DPP-4」の働きを抑えることで、インクレチンの効果を長持ちさせ、食後の血糖上昇を穏やかにします。

代表的な薬剤には、シタグリプチン(ジャヌビア)、ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)などがあります。これらは単剤でも使用されますが、メトホルミンやSU薬などと併用されることも多いです。

DPP-4阻害薬の利点は、低血糖を起こしにくく、体重にほとんど影響しない点です。また、腎機能や高齢者にも比較的安全に使用できます。一方で、効果は中等度であり、血糖を大きく下げたい場合には他の薬との併用が必要です。全体として、安全性と使いやすさのバランスが良い薬剤群といえます。


4. SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、近年注目を集めている糖尿病治療薬で、腎臓でのブドウ糖再吸収を抑制することで血糖を下げます。通常、腎臓では血液中のブドウ糖がいったん尿中にろ過された後、SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)というたんぱく質によって再吸収され、再び血液に戻ります。SGLT2阻害薬はこの働きをブロックし、余分なブドウ糖を尿として排出させることで、インスリンとは無関係に血糖値を下げるのが特徴です。

代表的な薬には、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、トホグリフロジン(デベルザ)などがあります。これらは血糖降下作用だけでなく、体重減少や血圧低下効果も期待でき、肥満や高血圧を合併する糖尿病患者に適しています。また、心不全や慢性腎臓病に対しても有用性が報告されており、糖尿病以外の分野でも使用が広がっています。

一方で、副作用として尿路感染症や脱水、まれにケトアシドーシスを起こすことがあるため、十分な水分摂取や体調管理が必要です。SGLT2阻害薬は、血糖管理に加え、全身の代謝バランスを整える新しいタイプの薬といえます。


5. α-グルコシダーゼ阻害薬

α-グルコシダーゼ阻害薬は、食後の血糖上昇を抑える作用を持つ糖尿病治療薬です。主に小腸で働き、炭水化物がブドウ糖に分解される過程を遅らせることで、糖の吸収速度を緩やかにします。これにより、食後の急激な血糖上昇を防ぎ、血糖の安定化に寄与します。インスリン分泌を直接刺激しないため、単独で使用する場合は低血糖を起こしにくい点が特徴です。

代表的な薬剤には、アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)、ミグリトール(セイブル)などがあります。これらはいずれも食直前に服用し、食事中の糖の吸収をコントロールします。特に、食後高血糖が目立つ初期の2型糖尿病患者や、他の薬で十分な効果が得られない場合に併用されることが多いです。

副作用としては、糖の分解が遅れるために大腸で発酵が起こり、腹部膨満感やガス、下痢などの消化器症状がみられることがあります。これらは服薬を続けるうちに軽減する場合もありますが、食事内容の工夫も重要です。また、他の薬(SU薬など)と併用した際に低血糖を起こすことがあり、その場合はブドウ糖での対応が必要です。

α-グルコシダーゼ阻害薬は、食後血糖のコントロールを目的とする基本的な薬であり、食事療法と組み合わせることでより効果を発揮します。日本人のように炭水化物中心の食生活を送る人には、特に適した薬剤といえます。


6. GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬は、インクレチンと呼ばれる消化管ホルモンの一種「GLP-1」の働きを強化する糖尿病治療薬です。GLP-1は、食事を摂ると腸から分泌され、膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進し、同時にα細胞からのグルカゴン分泌を抑制して血糖を下げます。さらに、胃の内容物の排出を遅らせることで食後血糖の上昇を抑え、満腹感を高める作用もあるため、体重減少効果も期待できます。

代表的な薬剤には、リラグルチド(ビクトーザ)、デュラグルチド(トルリシティ)、セマグルチド(オゼンピック/リベルサス)などがあり、注射剤が中心ですが、近年では経口タイプも登場しています。

GLP-1受容体作動薬の利点は、低血糖を起こしにくく、体重を減らす方向に働く点です。また、心血管疾患のリスクを減らす効果も報告されており、肥満や動脈硬化を合併する糖尿病患者に適しています。一方で、吐き気や胃の不快感などの消化器症状が出ることがあり、少量からの開始が推奨されます。GLP-1受容体作動薬は、血糖コントロールと全身管理を両立できる新しい世代の糖尿病薬といえます。


7. インスリン製剤

インスリン製剤は、体内で不足または働きが低下したインスリンを補う糖尿病治療の基本薬です。特に1型糖尿病ではインスリン分泌がほぼ失われるため必須となり、2型糖尿病でも経口薬で十分な血糖コントロールが得られない場合に使用されます。インスリンは血糖を細胞に取り込ませる働きを持ち、血糖値を直接的に下げる唯一のホルモンです。

インスリン製剤には作用時間の違いによりいくつかの種類があります。食後の急激な血糖上昇を抑える「速効型」や「超速効型」(ノボラピッド、ヒューマログなど)、1日を通じて安定した血糖を維持する持効型(ランタス、トレシーバなど)、両者を組み合わせた混合型があります。患者の生活リズムや食事内容に合わせて使い分けられます。

投与方法は主に皮下注射で、ペン型注射器を用いることが多く、近年では血糖測定器と連動するインスリンポンプや持続皮下注システムも普及しています。

インスリン療法の最大の注意点は低血糖のリスクであり、食事量や運動量とのバランス調整が不可欠です。また、体重増加が起こることもありますが、近年では用量調整がしやすく、安全性の高い製剤が増えています。インスリン療法は、血糖コントロールの最終手段であると同時に、適切に使えば合併症予防に非常に有効な治療法です。

1型糖尿病、妊娠糖尿病、膵性糖尿病、ミトコンドリア糖尿病は、体内のインスリン分泌量が少ないので、原則治療薬はインスリンです。生活習慣病の2型糖尿病は、内服薬、GLP1受動態作動薬、インスリンのいずれの薬剤も適応があります。

まず2型糖尿病の患者様は、まず内服薬から導入します。糖尿病の治療効果はHbA1cで判定し、合併症予防となる7.0%を目標とします。内服薬を1剤導入して目標達成とならなかった場合、同薬剤の量を増やすか2剤目を追加します。追加する薬剤は、導入済みの薬剤と異なる作用機序のものが望ましいです。ガイドラインなどでの統一された基準はないのですが。

糖尿病内服薬を3〜4剤導入しても目標達成とならない場合、GLP1受動態作動薬、インスリン製剤の導入を検討します。
内服薬の選択は担当医の判断となりますが、当院では心臓、肝臓、腎臓、呼吸機能が正常であり、乳酸アシドーシスとなる病態がない場合は、メトホルミンを第1選択としています。歴史のある薬で血糖降下作用が十分に科学的に証明されているからです。

第2、3選択の内服薬は、DPP-4阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬を選択することが多いです。SU薬は低血糖のリスクが高いので、現在は選択されることが少なくなっています。

監修 医師:今野正裕

新宿、西新宿の内科、発熱外来、脳神経内科、整形外科は西新宿今野クリニックへ。予約はこちら

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