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アミロイドーシスは、アントニオ猪木さんの公表をきっかけに病名を知った方もいるのではないでしょうか。体内のタンパク質が形を変え、「アミロイド」という線維状の物質として臓器や組織に沈着し、働きを妨げる病気の総称です。
大切なのは、アミロイドの原因となるタンパク質と、障害されている臓器を確認することです。AL・AA・ATTRなどの種類があり、症状も検査も治療も同じではありません。この記事では、分類・症状・検査・治療と、病型に応じた相談先を解説します。[1・2]
強い呼吸困難、意識の異常、持続する強い胸痛がある場合は、通常の外来を待たず119番へ連絡してください。[10]
猪木さんは、2020年7月26日の本人のSNS投稿で、検査によって心アミロイドーシスと分かったことを公表しています。ここでは、この公表された病名について説明します。[3]
「心アミロイドーシス」は、アミロイドが心臓に沈着して障害を起こす状態を表す言葉です。心筋が厚く硬くなり、血液を十分に受け入れにくくなるなどして、心不全や不整脈につながることがあります。原因にはALやATTRなどがあり、「心アミロイドーシス」という病名だけでは、どのタンパク質が原因かは分かりません。[4]
個人の公表内容と病気一般の説明は分けて考える必要があります。猪木さんについて、公表された病名からAL型・ATTR型の別や遺伝性、個別の治療内容、直接の死因を推測することはしません。
アミロイドを構成するタンパク質によって、いくつかの型に分かれます。以下は主な全身性アミロイドーシスの特徴です。すべての患者さんに、表にある臓器の障害が起こるわけではありません。[1・2・4]
表が画面に収まらない場合は、表の部分を横にスクロールしてご覧ください。
| 種類 | 原因・背景 | 主に確認する臓器・特徴 |
|---|---|---|
| AL型 | 異常な形質細胞などが作る免疫グロブリンの軽鎖が原因 | 心臓、腎臓、末梢神経、消化管など。多発性骨髄腫を伴うこともありますが、AL型と多発性骨髄腫は同じ診断ではありません。 |
| AA型 | 関節リウマチや慢性感染症など、炎症が長く続く病気に関連。血清アミロイドA(SAA)に由来 | 腎臓や消化管など。原因となる炎症性疾患の評価・治療が重要です。 |
| 遺伝性ATTR(ATTRv) | TTR遺伝子の病的な変化により、トランスサイレチンがアミロイドを作りやすくなる | 末梢神経・自律神経や心臓など。発症年齢や症状の組み合わせには幅があります。 |
| 野生型ATTR(ATTRwt) | TTR遺伝子に病的な変化がない、通常のトランスサイレチンが沈着。加齢が関係 | 高齢者の心臓の障害が中心となることがあり、手根管症候群などを伴う場合もあります。遺伝性ATTRとは区別します。 |
すべてのアミロイドーシスが遺伝するわけではありません。遺伝性ATTRでも、家族の発症が分かっていないことや、症状の現れ方が家族間で違うことがあるため、家族歴がないだけでは否定できません。神経症状から始まる方だけでなく、心臓の症状が目立つ方もいます。[5]
ATTRと診断された場合などには、遺伝性か野生型かを区別するためにTTR遺伝学的検査を検討します。本人や家族に関わる情報なので、検査の意味・限界について説明を受け、本人の意思を尊重して進めます。必要に応じて遺伝カウンセリングにつなげます。[4・5]
アルツハイマー病では脳のアミロイドβが関わりますが、ALやATTRとは原因タンパク質や病態が異なります。全身性アミロイドーシスの診断が、そのままアルツハイマー病や認知症になることを意味するわけではありません。このほか、長期透析に関連するアミロイドーシスなどもあります。[1]
症状は沈着する臓器や病型によって異なります。以下の症状は、より一般的な心臓・腎臓・神経の病気などでも起こるため、症状の持続・進行と検査所見を合わせて判断します。[1・4・5]
心臓に沈着すると、心筋が硬くなって働きが低下し、歩行や階段での息切れ、疲れやすさ、足のむくみ、動悸などが現れることがあります。不整脈や血圧低下により失神する場合もあります。心臓の壁が厚いという検査結果だけで、この病気と診断できるわけではありません。
腎臓の障害では、尿に蛋白が出ることや、腎機能の低下が手がかりになります。蛋白が多く失われると、むくみなどが問題になる場合があります。自覚症状が乏しく、尿検査や血液検査で気づくこともあります。
感覚や運動を担う末梢神経の障害では、手足のしびれ、痛み、感覚の鈍さ、筋力低下、歩きにくさなどが現れます。一方、自律神経の障害では、立ち上がったときの血圧低下による立ちくらみ、発汗や排尿の異常、便秘・下痢などが問題になります。
手根管症候群、とくに両手の症状や手術歴は、他の所見と合わせてATTRを考える手がかりになることがあります。ただし、手根管症候群やしびれだけでアミロイドーシスとは診断できません。
食欲不振、腹部膨満、下痢や便秘、吸収不良による体重減少などが起こる場合があります。消化管への沈着による障害と、自律神経の障害による症状を区別して評価します。肝臓の腫大や皮膚の紫斑などを伴う病型もありますが、これらも症状だけで原因を決めることはできません。

診断では、症状の経過、持病、家族歴、臓器の検査所見を確認します。そのうえで、アミロイド沈着の有無と、原因タンパク質の種類を調べます。全員にすべての検査を行うわけではありません。[2・4・6]
単クローン性タンパク質が見つかっても、それだけでAL型と決まるわけではありません。検査値は腎機能などの影響も受けるため、単独の検査だけで確定・除外せず、専門医が所見を組み合わせます。神経症状があれば神経伝導検査、消化管症状があれば内視鏡などを検討する場合もあります。
生検は、脂肪・皮膚・消化管・腎臓・心筋などから少量の組織を採り、アミロイドを確認する検査です。採取部位は、疑う病型、検出されやすさ、体への負担を考えて選びます。コンゴーレッド染色と、偏光顕微鏡での特徴的な緑色の複屈折などが沈着確認に用いられます。
さらに免疫染色や、必要に応じた質量分析で原因タンパク質を調べます。「アミロイドが見つかったこと」と「AL・AA・ATTRのどれかが分かったこと」は別の段階です。採取部位で検出されない場合もあり、その後の検査は疑いの強さに応じて判断します。
心臓の症状・画像所見が合い、適切に評価した骨シンチグラフィで心筋への明らかな集積があり、血清遊離軽鎖・血清と尿の免疫固定法などでALを示唆する単クローン性タンパク質が認められない場合などには、生検を行わずに心ATTRの臨床診断に至ることがあります。国内指針では、生検による確実例と、検査を組み合わせた疑いの強い例(Probable)を区別しています。[4・7]
一方、単クローン性タンパク質がある、集積が弱い、検査同士の結果が合わない場合などは、生検による病型確認を含めて検討します。生検の要否や治療開始の条件は、専門医が現在の診断基準と薬剤ごとの要件を確認して判断します。
治療は、原因タンパク質の産生やアミロイド形成を抑える治療と、臓器障害への支援を組み合わせます。治療の選択肢は増えていますが、すべての患者さんで進行停止や症状回復、完治を保証するものではありません。[2・4・6]
血液内科で、異常な免疫グロブリン軽鎖の産生を抑える薬物治療を検討します。抗体薬などを組み合わせる治療や、適応がある方への自家(自己)造血幹細胞移植を併用した大量化学療法があります。移植は「進行したら行う」ものではなく、心臓・腎臓の機能、血圧、年齢、全身状態などから負担に耐えられるかを慎重に判断します。[6]
関節リウマチなどの炎症性疾患や慢性感染症を治療し、SAAの産生を抑えることが基本です。原因疾患に応じた診療科と腎臓内科などが連携します。AA型というだけで、AL型と同じ抗がん薬治療を行うわけではありません。[1・2]
TTR安定化薬は、TTRの構造を安定させてアミロイドを作りにくくする薬です。核酸医薬はTTRの産生を抑えます。後者は遺伝子そのものを書き換えて治す治療ではありません。
国内で使用される薬の例は以下のとおりです。多発ニューロパチー(複数の末梢神経の障害)と心筋症では、薬剤・製剤ごとに適応が異なります。[8]
心臓への適応では、心不全の状態や重症度、臨床試験で確認された対象などを踏まえて選びます。たとえばアコラミジスでは腎機能の確認、ブトリシランではビタミンA低下への対応など、薬ごとの注意が必要です。自己判断で薬やサプリメントを追加・変更せず、専門医の説明を受けてください。
心不全のむくみに対する利尿薬、腎機能に応じた管理、しびれや痛みへの治療、リハビリテーション、栄養管理などを病状に合わせて行います。心アミロイドーシスでは血圧が下がりやすい場合もあり、ACE阻害薬など一般的な心不全の薬を全員に一律に使うわけではありません。[4・7]
医療費助成は、指定難病の対象となる病型・診断基準・重症度などの条件で判断されます。すべてのアミロイドーシスや全患者さんが自動的に対象になるわけではないため、主治医や医療機関の相談窓口で確認してください。[2]
症状と疑われる病型によって、診断・治療を担当する科は異なります。必要に応じて複数の専門科が連携します。
進行する息切れやむくみ、失神を繰り返す、しびれ・筋力低下が悪化する、理由の分からない体重減少が続く場合などは、早めに相談してください。失神した場合は、意識が戻っていても速やかに医療機関へ相談し、現在も意識がおかしい、胸痛や強い息苦しさがある場合は119番を優先します。
強い呼吸困難、意識異常、持続する強い胸痛などは、アミロイドーシスかどうかにかかわらず救急対応が必要です。具合が悪い状態で自分で運転せず、119番へ連絡してください。[10]
アミロイドーシス全体をがんと呼ぶことはできません。AL型は異常な形質細胞などが作るタンパク質に関わり、多発性骨髄腫を伴うこともありますが、AL型と骨髄腫は同じ診断ではありません。AA型やATTR型なども含め、病型に応じた評価が必要です。
遺伝性ATTRなど遺伝する病型と、AL・AA・野生型ATTRなど通常は遺伝性ではない病型があります。家族歴がなくても遺伝性ATTRは否定できません。遺伝学的検査は説明を受け、本人の意思を尊重し、必要に応じて遺伝カウンセリングを利用して進めます。
しびれだけでは診断できません。糖尿病や神経の圧迫など、ほかの原因でも起こります。しびれが広がる、筋力が低下する、立ちくらみや心臓の異常などを伴う場合は、経過や検査結果を脳神経内科などで相談してください。
生検は沈着と病型の確認に重要ですが、心ATTRでは症状・画像所見、骨シンチグラフィ、血清遊離軽鎖と血清・尿の免疫固定法などの条件が合えば、生検を行わず臨床診断する場合があります。検査一つで決まるわけではなく、生検の要否や治療の条件は専門医が判断します。
病型に応じた治療があります。AL型では異常な軽鎖の産生を抑え、AA型では原因の炎症を治療し、ATTR型では適応に応じたTTR安定化薬や核酸医薬などを検討します。臓器障害への支援も重要です。治療効果には個人差があり、完治や進行停止を保証するものではありません。
しびれ・筋力低下などは脳神経内科、心臓の症状は循環器内科、蛋白尿・腎機能低下は腎臓内科、AL型が疑われる場合は血液内科が相談先です。迷う場合は内科で相談してください。強い呼吸困難、意識異常、持続する強い胸痛は119番を優先します。
受診先に迷う場合は、症状の経過や健診・検査の結果を持って内科で相談することができます。西新宿今野クリニックでは、脳神経内科と内科の診療を行っています。しびれや筋力低下、複数の体調変化について診察し、必要に応じて専門医療機関での評価につなげます。
生検・骨シンチグラフィ・遺伝学的検査や病型に応じた専門治療は、必要性と受診先を相談して進めます。お薬手帳やこれまでの検査結果があればお持ちください。所在地は地図・交通案内をご確認ください。救急症状がある場合は、来院より119番への連絡を優先してください。
病気一般の説明と、猪木さん本人が公表した内容は区別しています。薬剤の国内適応は2026年9月14日にPMDAの現行電子添文を確認しています。