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アントニオ猪木さんが患っていた、アミロイドーシスとは?珍しい病気ですが、解説をしていきます。

アミロイドーシスは珍しい病気ですが、アントニオ猪木さんが患っていたことで聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。この病気は、人体に悪影響を及ぼすアミロイドというタンパク質が、全身の臓器に沈着することで臓器障害を認める病気です。

障害される臓器は、心臓、腎臓、小腸〜大腸、末梢神経など多岐に渡ります。例えばアミロイドが心臓に付着したら心不全、心肥大、不整脈に、腎臓なら腎不全、ネフローゼ症候群に、腸なら吸収不良や下痢、末梢神経なら排尿障害、発汗障害、勃起障害を認めます。アントニオ猪木さんは、心アミロイドーシスによる心不全が直接の死因でした。

目次

アミロイドーシスの分類

アミロイドーシスは、体内で「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質がさまざまな臓器や組織に沈着し、機能障害を引き起こす疾患群の総称です。アミロイドは本来の立体構造を失い、繊維状の構造をとって沈着するため、組織が硬くなり正常な働きを妨げます。このアミロイドを構成するタンパク質の種類によって、アミロイドーシスはいくつかの型に分類されます。

最も代表的なのが AL型アミロイドーシス(原発性アミロイドーシス) です。これは骨髄の形質細胞が異常に増殖し、免疫グロブリンの軽鎖(L鎖)がアミロイドとして沈着するもので、多発性骨髄腫と関連することがあります。心臓、腎臓、神経、消化管などに沈着し、全身性に進行することが多い型です。

次に多いのが AA型アミロイドーシス(二次性アミロイドーシス) です。これは慢性炎症性疾患(関節リウマチ、慢性感染症、炎症性腸疾患など)によって肝臓で産生される血清アミロイドA(SAA)という急性期タンパク質が沈着して発症します。主に腎臓が障害され、蛋白尿や腎不全が問題になります。

さらに、ATTR型アミロイドーシス はトランスサイレチン(TTR)というタンパク質が原因となります。TTRは本来、ビタミンAや甲状腺ホルモンを運ぶ役割を持つ肝臓由来のタンパク質ですが、遺伝的変異により不安定化してアミロイド化する「遺伝性ATTRアミロイドーシス」と、加齢によって正常TTRが沈着する「加齢性(野生型)ATTRアミロイドーシス」があります。前者では末梢神経障害や心筋障害が、後者では主に心筋障害が問題になります。

このほか、透析を長期間行っている患者でβ₂ミクログロブリンが沈着する 透析関連アミロイドーシス(Aβ₂M型) や、脳にアミロイドβが沈着して発症する アルツハイマー病(Aβ型) なども、広義のアミロイドーシスに含まれます。

このようにアミロイドーシスは原因となるタンパク質によって臨床像や治療法が大きく異なります。そのため、正確な型の分類と診断が治療方針を決めるうえで極めて重要です。

アントニオ猪木さんが患っていたのは、「全身性アミロイドーシス(AL型アミロイドーシス)」と考えられています。AL型は、骨髄中の形質細胞という免疫細胞が異常に増え、免疫グロブリンの一部である「軽鎖」と呼ばれるタンパク質が体内でアミロイドとなって沈着するタイプです。このアミロイドが心臓、腎臓、神経、消化管、筋肉など全身の臓器にたまり、さまざまな機能障害を引き起こします。猪木さんの場合も、長期間にわたり全身の筋力低下や体重減少、歩行困難などが進行していたことが知られています。AL型は進行が比較的早く、治療には抗がん剤や造血幹細胞移植などが行われることもありますが、完治は難しい病気です。猪木さんの闘病は、この難病と向き合いながらも「最後まで闘う姿勢」を貫いた象徴的なものでした。

アミロイドーシスの世界的な有病率

アミロイドーシスは世界的にまれな疾患で、全身性AL型の有病率は人口10万人あたり約8〜12人とされています。AA型は慢性炎症性疾患の有病率に左右され、地域差があります。ATTR型は遺伝性のものは希少ですが、加齢性の野生型ATTRは高齢者で増加傾向にあり、心不全や神経障害の原因として潜在的患者が多いと考えられています。希少疾患であるため、早期診断と正確な型分類が治療に重要です。


アミロイドーシスの主な症状

アミロイドーシスは、異常なタンパク質「アミロイド」が全身の臓器や組織に沈着することで起こる疾患群で、沈着部位によって症状は多彩です。代表的なAL型、AA型、ATTR型など、型によって臨床像に特徴がありますが、共通して臓器の機能低下に伴う症状が現れます。

まず心臓に沈着すると、心筋の硬化や拡張障害が生じます。その結果、息切れ、倦怠感、むくみ(浮腫)、動悸など心不全に似た症状が現れます。AL型では進行が比較的早く、急速に心機能が低下することがあります。ATTR型では加齢性の野生型では主に高齢者の心不全症状として発見されることが多いです。

腎臓への沈着では、蛋白尿や腎機能低が生じます。AA型は特に腎障害が顕著で、むくみや倦怠感、高血圧などを伴うことがあります。進行すると慢性腎不全に至ることもあります。

神経系にアミロイドが沈着すると、末梢神経障害や自律神経障害が起こります。手足のしびれ、感覚鈍麻、歩行障害などが現れ、心拍数や血圧の調節異常、排尿障害、便秘・下痢といった自律神経症状も見られます。ATTR型アミロイドーシスでは、末梢神経障害が初期症状として現れることが多く、手足のしびれや筋力低下から発症することがあります。

消化器系への影響も重要です。食欲不振、腹部膨満、下痢や便秘、体重減少などが生じ、吸収不良や栄養障害を引き起こすことがあります。また、肝臓に沈着すると肝腫大や肝機能異常が起こることがあります。

さらに、皮膚や粘膜にもアミロイドは沈着し、皮下結節、紫斑、眼瞼や口腔粘膜の黄白色沈着などが見られることがあります。まれに出血傾向を伴うこともあります。

このようにアミロイドーシスは、心臓、腎臓、神経、消化管、皮膚など多臓器にわたる症状を呈し、型や沈着部位によって臨床像が異なるため、症状だけで診断するのは難しい疾患です。進行性であることが多いため、早期発見と正確な型の診断が、治療方針を決定するうえで極めて重要となります。

アミロイドーシスの検査

アミロイドーシスの診断には、症状や臨床所見に加えて、組織のアミロイド沈着を確認する検査が基本となります。最初の手がかりは、心不全、腎障害、末梢神経障害、体重減少など、多臓器にわたる非特異的な症状です。これらの症状からアミロイドーシスを疑った場合、血液・尿検査や画像検査、組織生検が行われます。

血液・尿検査では、全身性AL型アミロイドーシスのスクリーニングとして、血清や尿中の異常免疫グロブリン軽鎖の測定が有用です。AA型の場合は、慢性炎症による血清アミロイドA(SAA)の上昇が参考になります。腎機能や肝機能、心筋障害の指標として血液検査でクレアチニン、尿蛋白、肝酵素、BNPなどを測定することもあります。

画像検査では、心臓への沈着を評価する目的で心エコーや心臓MRI、心筋シンチグラフィーが用いられます。ATTR型では、骨シンチで心筋への集積を確認できることがあり、非侵襲的に診断の手がかりとなります。また、腎臓や肝臓の大きさ、脂肪組織の沈着状況を評価するためにCTやMRIが行われることもあります。

最終的な確定診断には組織生検が不可欠です。皮膚や腹部脂肪組織、腎臓、心筋、神経などから採取した組織を用い、コンゴーレッド染色でアミロイドの存在を確認します。偏光下で赤色または緑色の二色性を示すのが特徴です。さらに、免疫組織化学や質量分析でアミロイドの種類(AL、AA、ATTRなど)を特定することで、治療方針を決定することができます。

その他、末梢神経障害の評価として神経伝導検査、消化管症状の評価として内視鏡や生検が行われることもあります。これらの多角的な検査を組み合わせることで、症状だけでは分かりにくいアミロイドーシスの診断と型の同定が可能になります。

アミロイドーシスの治療法

アミロイドーシスの治療は、アミロイドの沈着を抑えることと、臓器障害に対する症状管理の両面で行われます。まず、AL型(原発性)では、骨髄の形質細胞が異常に産生する免疫グロブリン軽鎖が原因となるため、抗がん剤やステロイドを用いて異常細胞の増殖を抑える治療が中心です。進行例では、自己末梢血幹細胞移植が行われることもあります。

AA型(二次性)では、基礎となる慢性炎症性疾患や感染症をコントロールすることが最も重要です。関節リウマチや慢性感染症の治療によって血清アミロイドA(SAA)の産生を抑え、腎障害などの進行を防ぎます。

ATTR型(トランスサイレチン型)では、TTRの異常沈着を防ぐ薬剤が開発されており、TTR安定化薬や遺伝子治療薬が用いられます。また、加齢性ATTRでは心不全に対する利尿薬やACE阻害薬などで症状を緩和する治療が行われます。

さらに、全型に共通して、臓器障害に対する支持療法が重要です。心不全、腎不全、末梢神経障害、消化管障害に応じて、利尿薬や透析、リハビリテーション、栄養管理などが行われます。アミロイドーシスは進行性疾患であるため、早期診断と型に応じた治療開始が予後を大きく左右します。

アミロイドーシスを疑った場合に受診すべき診療科

アミロイドーシスを疑った場合、受診する科は症状や疑われるアミロイドの型によって異なります。全身性のAL型やAA型が疑われる場合は、血液・腫瘍内科や合内科)が初期の受診先として適しています。特にAL型では骨髄由来の異常が関与するため、血液内科での精査が重要です。

息切れ、むくみが主体の場合は循環器内科、蛋白尿や腎機能低下が主体の場合は腎臓内科を受診することが適しています。末梢神経障害や自律神経症状が目立つ場合は神経内科も選択肢となります。

いずれの場合も、最終的な診断には組織生検や血液・尿検査、画像検査が必要で、複数の専門科が連携して評価することが多いです。疑わしい症状がある場合は、まず内科系の総合的な診療科で相談し、必要に応じて専門医へ紹介してもらうのが安全です。


専門的に診断・治療できる科

最終的には 血液内科(特に造血器腫瘍を扱う科) が中心となって診断・治療を行うことが多いです。
ただし、症状が出ている臓器の内科と連携して治療にあたることになります。

アミロイドーシスが気になったら、当院へご来院ください。

アミロイドーシスが心配でしたら、当院へご来院ください。

監修 医師:今野正裕

新宿、西新宿の内科、発熱外来、脳神経内科、整形外科は西新宿今野クリニックへ。予約はこちら

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