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筋萎縮性側索硬化症(ALS)

怖い病気と有名な筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経が徐々に障害される進行性の神経疾患です。運動神経には脳から脊髄に伸びる上位運動神経と、脊髄から筋肉に信号を伝える下位運動神経がありますが、ALSではこれらの神経が変性して死滅することで、筋肉の運動機能が次第に失われます。病態の中心は、運動神経の脱落により筋肉が十分に動かなくなることです。これにより手足の力が入りにくくなる、歩きにくくなる、物を握りにくくなるといった運動障害が現れます。さらに、下位運動神経の障害により筋肉自体が萎縮し、筋力低下が進行します。また、筋肉の使われない部分では筋肉のこわばりやけいれんが起きることもあります。

ALSは感覚神経や知能には基本的に影響を及ぼさないため、記憶や感覚は保たれたまま、運動機能だけが徐々に失われるのが特徴です。しかし、進行すると呼吸筋も侵され、呼吸困難が起こることが最も深刻な問題となります。原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や細胞内の異常タンパク質の蓄積、酸化ストレスなどが関与していると考えられています。運動神経が徐々に失われることで、生活全般に深刻な影響を与える病気です。

ALSの原因、遺伝性はあるか、好発年齢など

ALSの発症原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。ALSには家族性ALS(約5~10%)と孤発性ALS(約90~95%)があり、家族性の場合はSOD1遺伝子、C9orf72遺伝子、TARDBP遺伝子など特定の遺伝子変異が関与しています。一方、孤発性ALSは遺伝子だけでなく、加齢や環境因子が発症に関与すると考えられています。

環境要因としては、職業的な金属や農薬への曝露、激しい運動、喫煙、過剰なストレスなどが報告されていますが、確実な因果関係は明らかではありません。年齢は最大のリスク因子で、40歳以降に発症率が上昇し、特に50~70歳で多く見られます。性別では男性の方が若干高い発症率を示す傾向があります。ALSの発症には、細胞内での酸化ストレス、ミトコンドリア機能障害、異常なタンパク質の蓄積、神経細胞間の炎症反応などが関与しているとされます。これらが神経細胞を徐々に破壊し、筋萎縮や運動機能の低下を引き起こすのです。

ALSの初期症状、進行するとうなるか?

ALSの初期症状は非常にささいで気づきにくいことがあります。最も多いのは手や足の筋力低下で、例えば物を持ちにくくなる、ボタンを留めにくい、つまずきやすくなるといった日常動作の変化です。指先の細かい動きがぎこちなくなることや、歩行が少し不安定になることも初期のサインです。また、下位運動神経の障害による筋肉のこわばりや、軽いけいれん(筋痙攣)が現れることもあります。声のかすれやろれつが回りにくくなるといった症状から始まる場合もあります。

進行すると症状は全身に広がります。手足だけでなく、体幹や首の筋肉、さらに呼吸筋にまで影響が及ぶと、立ったり歩いたりすることが困難になり、呼吸や嚥下にも支障が出ます。食事や会話、日常生活動作の多くが制限され、最終的には人工呼吸器や経管栄養が必要になることもあります。ALSでは感覚や知能は保たれるため、自分の思考は正常でも体が思うように動かせないもどかしさが特徴です。このように、初期は軽い運動障害から始まり、進行とともに筋力低下が全身に広がり、生命維持に関わる機能にも影響する病気です。

大きい病院でないと確定診断できないALS

ALSの診断は、主に神経内科で行われます。診断は他の神経疾患との鑑別を含めて総合的に評価され、運動神経の障害の有無とパターンが重要です。医師は、筋力低下、筋萎縮、腱反射の亢進や低下、痙縮の有無などを確認します。

神経伝導速度検査(NCS)や筋電図(EMG)によって、運動神経の障害の部位や程度を評価します。筋電図では、神経から筋肉への信号が低下していることや、筋肉が異常な電気活動を示していることが確認できます。MRIやCTは、脳や脊髄の構造異常を除外するために行われます。また、血液検査で代謝性疾患や感染症など、ALSと症状が似ている疾患を除外することも重要です。ALSは診断に時間がかかることがありますが、早期発見は症状管理や生活支援、リハビリテーションの計画において非常に重要です。診断は、神経症状の進行パターンと検査結果を総合的に評価して行われます。

難病のALS、治療法や進行をおさえる薬は?

ALSは現時点で根治治療は確立されていません。治療の目的は、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することにあります。薬物療法としては、進行抑制を目的にリルゾール(Riluzole)が使用されます。リルゾールは神経細胞の過剰な興奮を抑え、神経細胞の損傷を遅らせる効果が期待されています。また、エダラボン(Edaravone)は酸化ストレスを軽減し、症状進行を緩やかにする作用があります。

運動機能低下に対しては、理学療法や作業療法が重要です。筋力や関節の可動域を維持し、歩行や日常生活動作の自立度をできるだけ保つことが目標です。呼吸筋が障害される場合は、呼吸リハビリや非侵襲的人工呼吸(NIV)が用いられます。嚥下障害が進行した場合には、経管栄養や食事形態の工夫によって栄養状態を維持します。

ALS患者の生活を支援するには、家族や医療チームとの連携が欠かせません。定期的なリハビリ、医療機器の使用、日常生活支援、心理的サポートが組み合わさることで、患者の生活の質を最大限に維持することが可能です。

予防と日常生活での注意

ALSの発症を確実に予防する方法は現在のところ確立されていませんが、健康的な生活習慣が神経の健康維持に役立つ可能性があります。適度な運動、栄養バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理などが推奨されます。感染症予防や定期的な健康チェックも重要です。

日常生活では、転倒防止のための住環境整備や、歩行器・手すりの活用、食事形態の調整、嚥下訓練などが必要です。症状が進行しても自立した生活をできるだけ長く維持できるよう、医療者や家族と連携しながら計画的に生活支援を行うことが大切です。心理的サポートや介護サービスの活用も、患者と家族の負担軽減に役立ちます。

ALSは進行性で予後に影響する疾患ですが、適切な薬物療法、リハビリ、生活支援を組み合わせることで、生活の質を維持しながら日常生活を送ることが可能です。早期の診断と多職種チームによる包括的なケアが、患者の自立と安全な生活を支える鍵となります。

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