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健康診断でLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)や中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低いと指摘された方へ。現在は「高脂血症」よりも「脂質異常症」という名称が一般的です。脂質異常症は自覚症状が乏しいことが多いため、検査値だけでなく、年齢、持病、喫煙、家族歴などを合わせて動脈硬化のリスクを評価することが大切です。
脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が高い、HDLコレステロールが低い、non-HDLコレステロールが高い状態などを含む病気です。脂質は細胞膜やホルモンの材料、エネルギー源として必要ですが、種類や量のバランスが崩れた状態が続くと動脈硬化性疾患のリスクに関係します。
「高脂血症」という呼び方も広く使われていますが、HDLコレステロールが低い状態も対象となるため、現在は脂質異常症と呼ばれます。
LDLはコレステロールを全身へ運びます。血中濃度が高い状態が続くと動脈硬化の進行に関係するため「悪玉コレステロール」と呼ばれますが、体に不要な物質という意味ではありません。
HDLは末梢組織からコレステロールを回収する働きなどから「善玉コレステロール」と呼ばれます。ただし、単純に高いほどよいとは限らず、HDLの数値だけで健康状態や治療の必要性を判断することはできません。
中性脂肪は重要なエネルギー源ですが、食事、飲酒、体重、血糖などの影響を受けます。著しく高い場合には動脈硬化だけでなく急性膵炎のリスクにも関係するため、程度に応じた評価が必要です。
日本動脈硬化学会の診断基準では、次のいずれかに該当する場合を脂質異常症として扱います。これはスクリーニングのための診断基準であり、そのまま全員共通の治療目標を示す数値ではありません。
空腹時とは、原則として10時間以上カロリーのある飲食をしていない状態です。中性脂肪は食事の影響を受けるため、採血条件を確認します。LDLコレステロールの計算法には適用条件があり、中性脂肪が高い場合や随時採血では、non-HDLコレステロールやLDL直接法などを用いて評価することがあります。1回の数値だけで原因や治療方針を決めず、採血条件、既往歴、服薬、必要に応じた再検査を含めて判断します。
自覚症状がなくても健診結果を保管し、過去からの変化を確認してください。LDLが同じ値でも、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、冠動脈疾患・脳血管疾患の既往、家族歴などによって将来のリスクと治療目標は異なります。境界域の値でも高リスクの病気がないか確認することが重要です。
食事内容、肥満、運動不足、飲酒、喫煙などが脂質値に影響する場合があります。ただし、本人の努力不足だけで起こる病気ではなく、体質や病気、薬剤など複数の要因が重なることがあります。
糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患、肝疾患などに伴う二次性脂質異常症があります。一部の薬剤も脂質値に影響することがありますが、処方薬を自己判断で中止せず、開始・変更時期と検査値を確認して処方医へ相談してください。
原発性脂質異常症には複数の病型があり、家族性高コレステロール血症(FH)は重要な遺伝性疾患の一つです。
FHでは生まれつきLDLコレステロールが高く、若い年代から動脈硬化が進みやすいことがあります。未治療時の著しいLDL高値、アキレス腱などの腱黄色腫、若年で狭心症・心筋梗塞を発症した血縁者やFHの家族歴などが診断の手がかりです。
黄色腫やLDL高値の一項目だけでFHと断定することはできません。続発性脂質異常症を除外し、未治療時の値や家族歴を含めて診断します。FHが疑われる場合は、早期からの治療や家族を含めた評価が重要になるため、必要に応じて専門医療機関と連携します。
脂質異常症そのものには自覚症状がないことが多く、健康診断や別の目的の血液検査で見つかります。頭痛、めまい、肩こりなどがあるだけで脂質異常症による症状とは判断できません。FHなどでは腱黄色腫がみられる場合がありますが、症状がないことを理由に異常がないとはいえません。
高LDLコレステロール血症などが長く続くと、ほかの危険因子とともに動脈硬化を進め、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの発症リスクを高める場合があります。ただし、脂質異常症があれば必ずこれらを発症するという意味ではありません。
突然の強い胸痛、呼吸困難、冷や汗、突然の片側麻痺やろれつ障害などは、通常外来を待たず早急な評価が必要です。また、高度の高トリグリセライド血症に強い上腹部痛や背部痛、繰り返す嘔吐を伴う場合は、急性膵炎などの原因を含めた評価が必要になるため、早めに医療機関を受診してください。
問診では健診結果、食事・飲酒・運動、体重変化、喫煙、家族歴、持病、服薬歴を確認します。血液検査ではLDL・HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールを評価し、必要に応じて血糖・HbA1c、肝機能、腎機能、甲状腺機能など、併存疾患や二次性の原因を検討します。
すべての方に同じ検査を行うものではありません。心電図やCT・MRIなどの画像検査も、通常の脂質異常症だけを理由に全員へ行う検査ではなく、症状、診察、既往歴から必要性を判断します。
食事は極端に脂質を避けるのではなく、過剰なエネルギー、飽和脂肪酸、糖質、飲酒などを個々の脂質異常に応じて見直します。野菜、海藻、大豆製品、魚などを取り入れ、継続できる内容を検討します。運動や体重管理も有用ですが、心臓・血管の病気や関節疾患がある方は無理に始めず相談してください。禁煙は動脈硬化リスクを抑えるうえで重要です。
生活習慣の見直しだけでは不十分な場合や、動脈硬化性疾患のリスクが高い場合は薬物療法を検討します。LDLを下げるスタチン、エゼチミブ、必要に応じたPCSK9阻害薬、中性脂肪を主に対象とするフィブラート系薬・選択的PPARαモジュレーター、病態に応じたEPA製剤などがあり、脂質の種類、治療目的、併存疾患、併用薬を考慮して選択します。
薬ごとに注意点があり、スタチンでは筋肉症状や肝機能異常などがみられる場合があります。服薬中に症状が出ても薬が原因とは限りません。自己判断で中止・変更せず、症状と服薬状況を処方医へ伝えてください。特定の薬がすべての方に最も適しているわけではありません。
診断基準と治療目標は別です。冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞の既往がある場合と、まだ発症していない場合では目標が異なり、一次予防でも年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、家族歴などからリスクを評価します。数値だけを自己判断で追わず、個別に目標と治療方法を決めます。
当院の内科では、健診結果や既往歴、家族歴、生活習慣を確認し、必要に応じて血液検査で脂質値や糖尿病・肝臓・腎臓・甲状腺などを評価します。高血圧、糖尿病、高尿酸血症なども含め、全体のリスクに応じて生活習慣と薬物治療を検討します。
FH、著しい脂質異常、動脈硬化性疾患、原因の詳しい評価など専門診療が必要な場合は、適切な専門医療機関へ紹介します。CT・MRIを含む画像検査は症状や診察所見から必要性を判断し、脂質異常症の方全員に一律で行うものではありません。
脂質異常症(高脂血症)は自覚症状が乏しくても、種類と程度、ほかの危険因子によって対応が異なります。健診でLDLコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された場合は、診断基準と個別の治療目標を区別し、原因と動脈硬化リスクを確認することが大切です。