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肥大型心筋症への薬、アフィカムテンとは?内科医が解説|西新宿今野クリニック

アフィカムテンは、心筋の過剰な収縮を抑える心筋ミオシン阻害薬です。米国では成人の症候性閉塞性肥大型心筋症(oHCM)の運動機能と症状を改善する目的で承認されています。一方、2026年9月3日時点で日本では承認されておらず、保険適用や通常販売もありません。国内外で状況が異なるため、PMDAなどの最新情報を確認する必要があります。本記事では、分かっている効果、心機能低下などのリスク、受診の目安を整理します。

国内での位置づけ:日本ではアフィカムテンを通常診療で処方できる状況ではありません。国内では日本人の症候性oHCM患者を対象とした試験が進行中です。当院でアフィカムテンの導入・処方・専門管理を行っているという意味ではありません。

アフィカムテンとは

アフィカムテンは、心臓の筋肉を収縮させる心筋ミオシンに作用し、過剰な収縮を抑える経口薬です。左室流出路の閉塞を軽くし、息切れや運動時の症状を改善することを目的とします。遺伝子変異を修復する薬でも、肥大型心筋症を根治する薬でもありません。

日本での承認・使用状況

2026年9月3日時点で、PMDAの新医薬品承認情報にアフィカムテンの国内承認は確認できません。したがって、日本での承認適応、添付文書、薬価、保険適用、通常販売はまだありません。日本人患者を対象とするCAMELLIA-HCM試験が実施されていますが、臨床試験への参加と承認後の一般診療は別です。

米国では2025年12月にMYQORZO(アフィカムテン)が、成人の症候性oHCMにおける運動機能と症状の改善を目的として承認されました。心不全リスクの枠付き警告があり、専門プログラムのもとで心エコーによる管理が求められます。米国の適応や用法を日本の診療へそのまま当てはめることはできません。

肥大型心筋症と閉塞性肥大型心筋症

肥大型心筋症(HCM)は、ほかの心臓病や全身疾患だけでは説明できない心筋の肥厚を特徴とする病気です。サルコメア関連遺伝子の変化が関係する場合がありますが、すべての患者さんで遺伝的原因が判明するわけではありません。家族歴が明らかでない例もあります。

心臓から血液が出る左室流出路に圧較差を生じる「閉塞性」と、明らかな閉塞がない「非閉塞性」に分けて考えます。アフィカムテンの承認根拠となった主な試験と米国適応は、成人の症候性閉塞性HCMが対象であり、すべてのHCM患者さんに一般化できません。

アフィカムテンの作用

心筋ミオシンとアクチンの結合を減らして過剰な心筋収縮を抑え、左室流出路圧較差を下げる作用があります。これは症状や血行動態を改善するための作用であり、病気の原因を除去したり治癒させたりすることを意味しません。中隔心筋切除術や経皮的中隔心筋焼灼術などが必要かどうかは、薬の効果だけでなく症状、解剖学的特徴、合併症、本人の希望を含めて専門施設が判断します。

SEQUOIA-HCM試験で示された効果

SEQUOIA-HCMは、症状のある成人の閉塞性HCM患者282人をアフィカムテン群とプラセボ群へ無作為に割り付け、24週間比較した第III相試験です。主要評価項目は心肺運動負荷試験で測定する最高酸素摂取量(peak VO₂)の変化でした。

24週時点のpeak VO₂は、アフィカムテン群で平均1.8 mL/kg/分増加し、プラセボ群では平均0.0 mL/kg/分でした。群間差は1.7 mL/kg/分でした。症状、NYHA心機能分類、患者報告による健康状態、左室流出路圧較差などの副次評価項目でも改善が示されました。一方、LVEFが50%未満へ低下したのはアフィカムテン群5人(4%)、プラセボ群1人(1%)で、試験中は臨床的心不全を伴わず回復可能と報告されましたが、実臨床での心不全リスクがないことを意味しません。ただし、24週間・282人の試験結果であり、長期的な有効性・安全性、非閉塞性HCM、小児、試験条件と大きく異なる患者さんへ同じ効果を保証するものではありません。症状の改善と治癒は区別する必要があります。

副作用と心機能低下への注意

心筋の収縮を抑える作用が強すぎると、左室駆出率(LVEF)が低下し、収縮機能低下による心不全を起こすおそれがあります。米国添付文書では心不全リスクが枠付き警告とされ、開始前と治療中の心エコー、症状、LVEF、左室流出路圧較差に応じた用量調整や中断が必要です。患者さんが自己判断で開始・中止・増減してはいけません。

米国添付文書では高血圧が比較的多い副作用として報告されています。また、代謝に関わる複数の酵素へ影響する薬との併用により、アフィカムテンの濃度が上がって心不全リスクが増したり、反対に効果が弱くなったりする可能性があります。処方薬、市販薬、サプリメントを含めて医療者へ伝える必要があります。妊娠中・妊娠の可能性がある場合も、海外の承認文書に基づく個別の確認が必要です。試験で重大事象が少なかったことだけから、長期使用や高齢者、併存疾患がある方にも一律に安全とはいえません。

マバカムテンとの違い

アフィカムテンとマバカムテンはいずれも心筋ミオシン阻害薬ですが、承認国、適応、用量調整、薬物動態、相互作用、モニタリング制度は製品ごとの承認文書で確認する必要があります。アフィカムテンは比較的短い半減期を持つよう設計されていますが、それだけで安全性が高い、調整が容易、マバカムテンより優れているとは結論できません。異なる試験同士の数値を単純比較せず、直接比較試験と各国の承認情報を踏まえる必要があります。

どのような患者が治療対象になるのか

米国での対象は、運動機能と症状の改善を目的とする成人の症候性閉塞性HCMです。治療前には診断、症状、左室流出路圧較差、LVEF、併用薬、妊娠の可能性などを専門医が確認します。非閉塞性HCMや無症状の方を含むすべてのHCMへ使用できるという意味ではありません。日本では未承認のため、国内で通常処方する対象条件は定まっていません。

息切れ・胸痛・失神がある場合の受診目安

HCMでは動悸、息切れ・呼吸の苦しさ、胸痛、めまいや失神がみられることがあります。ただし、これらには不整脈、虚血性心疾患、肺疾患、貧血など別の原因もあり、症状だけでHCMとは判断できません。HCMに心房細動を合併すると血栓塞栓症のリスクが問題になることがあり、突然の片側麻痺や言語障害は脳梗塞を含めた緊急評価が必要です。

受診と専門医への紹介

当院では、息切れ、動悸、胸部不快感などについて内科で初期評価を行い、肥大型心筋症や専門的な心臓検査・治療が必要と判断した場合は、循環器内科や対応可能な医療機関へ紹介します。当院でアフィカムテンを処方・導入・専門管理しているという意味ではありません。また、心エコー、ホルター心電図、心臓MRI、遺伝学的検査をすべて院内で実施できるという案内ではありません。

まとめ

アフィカムテンは、症候性閉塞性HCMの運動機能や症状、左室流出路圧較差の改善が臨床試験で示された心筋ミオシン阻害薬です。一方、心収縮を抑えることによるLVEF低下・心不全のリスクがあり、専門的な心エコー管理が不可欠です。2026年9月3日時点では日本未承認であり、米国の承認状況を国内診療と混同しないことが大切です。治療中の方は薬を自己判断で変更せず、主治医へ相談してください。

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