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新しい慢性腎不全の薬のケレンディアはどんなもの?内科医が解説|西新宿今野クリニック

ケレンディア(一般名:フィネレノン)は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)です。慢性腎臓病(CKD)を「治す」「腎臓を再生する」薬ではなく、対象となる患者さんの標準治療に追加し、腎・心血管イベントのリスクを下げることを目的に検討されます。CKDと、腎機能が高度に低下した末期腎不全は同じ意味ではありません。

ケレンディア®の作用機序と特徴

ミネラルコルチコイド受容体の過剰な活性化は、腎臓や心臓の炎症・線維化に関係すると考えられています。フィネレノンはこの受容体を選択的に阻害します。スピロノラクトンやエプレレノンとは化学構造や薬物動態が異なりますが、常に安全または優れていると単純には比較できません。尿アルブミンや将来のイベントが必ず改善する薬でもありません。

適応と対象患者

2026年9月時点の国内適応は、①2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中を除く)と、②慢性心不全です。慢性心不全では標準治療を受けている患者に限られ、左室駆出率が低下した心不全での有効性・安全性は確立していません。2025年12月に追加された心不全適応と、従来の2型糖尿病合併CKD適応では、対象・用量・カリウム基準が異なります。

この記事では主に2型糖尿病を合併するCKDでの使用を説明します。1型糖尿病や糖尿病を伴わないCKDへ国内適応を一般化することはできません。糖尿病合併CKDでは、原則としてACE阻害薬またはARBを使用できる場合に併用し、eGFRが25mL/min/1.73m²未満では利益とリスクを慎重に判断します。

エビデンス:FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験

FIDELIO-DKD:ACE阻害薬またはARBによる治療を背景とした2型糖尿病合併CKD患者が対象です。腎不全、eGFRの持続的40%以上低下、腎死からなる主要複合評価項目は、フィネレノン群17.8%、プラセボ群21.1%でした(ハザード比0.82)。高カリウム血症による投与中止は2.3%対0.9%でした。対象条件の異なるすべてのCKD患者へ結果を一般化できません。国内添付文書には、全体集団と比べ日本人では腎不全への進展抑制効果が弱い可能性も記載されており、試験対象の背景を踏まえた判断が必要です。

FIGARO-DKD:より幅広い病期の2型糖尿病合併CKD患者が対象です。心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全入院からなる主要複合評価項目は12.4%対14.2%(ハザード比0.87)で、差の中心は心不全入院の減少でした。各項目すべての効果を個別に断定する結果ではありません。

FIDELITY:独立した別試験ではなく、上記2試験の事前規定統合解析です。心血管複合評価項目は12.7%対14.4%(ハザード比0.86)、腎複合評価項目は5.5%対7.1%(ハザード比0.77)でした。これらは集団での確率差であり、個人の効果を保証する数値ではありません。

用法・用量と実臨床での使い方

2型糖尿病合併CKDでは、通常、開始時eGFRが60以上なら20mg、60未満なら10mgを1日1回服用します。開始・再開・増量から約4週間後に血清カリウム値とeGFRを確認し、その後も定期的に測定します。10mgから20mgへの増量は、カリウムが4.8mEq/L以下で、eGFR低下が30%以下の場合に検討します。カリウムが4.8超5.5mEq/L以下では用量を維持し、5.5mEq/Lを超えた場合は休薬します。5.0mEq/L以下になれば10mgで再開を検討します。

一般に開始時カリウムが4.8mEq/L以下で投与を開始し、4.8mEq/Lを超える場合は早期に再検査します。5.5mEq/Lを超える患者への新規開始は禁忌です。増量・休薬・再開は採血結果を確認した医師が判断し、患者さんが自己調整してはいけません。飲み忘れに気づいた場合は同じ日のうちに服用し、翌日に気づいた場合は飛ばしてください。2回分を一度に服用しません。慢性心不全では用量と調整基準が異なるため、処方時の指示と最新添付文書に従います。

副作用と安全性

特に重要なのは高カリウム血症です。自覚症状がない場合もあるため、症状がなくても定期採血が必要です。脱水、感染症、嘔吐・下痢、食事の変化、腎機能低下、ACE阻害薬・ARB、カリウム製剤、カリウム保持性利尿薬、NSAIDsなどでリスクが変化します。脱力、しびれ、動悸、胸部不快感があれば速やかに相談してください。ただし症状だけで高カリウム血症とは診断できません。

国内での禁忌:本剤成分への過敏症、強力なCYP3A阻害薬との併用、開始時血清カリウム値5.5mEq/L超、重度肝機能障害(Child-Pugh C)、アジソン病などです。慢性心不全ではeGFR 25mL/min/1.73m²未満も禁忌です。

併用注意・生活上の注意:中等度・弱いCYP3A阻害薬、強力・中等度のCYP3A誘導薬、カリウムを上昇させる薬、腎機能へ影響する薬などは確認が必要です。グレープフルーツを含む飲食物は血中濃度を上げる可能性があります。処方薬、市販薬、サプリメントを自己判断で開始・中止せず、医師・薬剤師へ共有してください。妊娠中は利益が危険性を上回る場合に限って検討し、授乳は避けることが望ましいとされています。

既存治療との位置づけ

2型糖尿病合併CKDの治療はケレンディアだけで完結しません。血糖と血圧の管理、患者背景に応じたACE阻害薬またはARB、SGLT2阻害薬、フィネレノン、脂質異常症の管理、禁煙、食事・塩分管理などを組み合わせます。フィネレノンをSGLT2阻害薬やACE阻害薬・ARBの単純な代替薬とは扱いません。

患者さんが知っておくべきポイント

  • 薬の開始前に血清カリウム値、eGFR、併用薬を確認する
  • 開始・増量・再開の約4週間後と、その後も定期的に採血する
  • 脱水、感染症、嘔吐・下痢、食事や薬の変更を医療者へ伝える
  • 処方量を自己判断で増減・中止しない

むくみの急激な悪化、尿量の著しい減少、息苦しさ、急な体重増加、強い倦怠感・脱力、動悸、胸部不快感、水分を取れない嘔吐・下痢がある場合は早めに医療機関へ相談してください。強い呼吸困難、胸痛、失神、意識状態の変化がある場合は、通常外来を待たず救急要請を検討します。

まとめ

ケレンディアは、国内では2型糖尿病を合併するCKDと、条件を満たす慢性心不全に承認されています。CKDでの使用は末期腎不全・透析中を除き、腎機能、血清カリウム値、標準治療、併用薬を確認して個別に判断します。期待される利益がある一方、高カリウム血症などへの定期的な監視が欠かせません。

当院では糖尿病、高血圧、慢性腎臓病について、血液検査や尿検査などを踏まえて治療方針を検討します。ケレンディアの使用を検討する場合は腎機能、血清カリウム値、併用薬などを確認します。進行した腎機能障害や専門的評価が必要な場合は、腎臓内科など対応可能な医療機関へ紹介します。ご相談は当院の内科をご確認ください。

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