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【休診日】日祝、水曜午後、土曜午後 ※第2・第4土曜日は休診
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エレビジス(一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象とする遺伝子治療用の再生医療等製品です。日本では対象となる年齢、歩行能力、遺伝子変異、抗AAVrh74抗体などに条件があり、希望すれば誰でも受けられる治療ではありません。本記事では、2026年9月時点の公的資料に基づき、期待される作用と限界、急性肝障害を含む安全性、国内外の適応の違いを解説します。
重要:エレビジスの適応判断と投与は、DMDと遺伝子治療について十分な体制を備えた専門施設で行われます。当院でエレビジスを投与しているという意味ではありません。治療中の薬や通院を自己判断で中止・変更せず、主治医と相談してください。
エレビジスは、アデノ随伴ウイルス由来のAAVrh74ベクターを使い、短縮型のジストロフィンである「エレビジス・マイクロジストロフィン」を作る遺伝情報を筋細胞へ届ける、単回静脈内投与の遺伝子治療製品です。正常なジストロフィン遺伝子全体を置き換える治療ではなく、DMDの原因となる遺伝子変異そのものを修復する治療でもありません。
DMDは、X染色体上のDMD遺伝子の病的変異により、筋肉を保護するジストロフィンがほとんど作られなくなる遺伝性筋疾患です。多くは男児の幼少期に、走りにくい、転びやすい、階段が難しい、床から立つときに手で膝を押すなどの症状で気づかれ、骨格筋だけでなく呼吸筋や心筋にも影響し得ます。
ジストロフィンは筋線維の構造を安定させ、収縮に伴う損傷から筋細胞を守る役割があります。DMDではジストロフィンが不足するため、日常的な筋収縮でも筋線維が傷つきやすくなり、炎症、線維化、脂肪化が徐々に進みます。このため筋力や運動機能が時間とともに低下します。
投与されたAAVrh74ベクターが筋細胞へ到達すると、組み込まれた遺伝情報をもとにマイクロジストロフィンが作られます。これは通常のジストロフィンより短いタンパク質です。筋細胞でマイクロジストロフィンが発現することと、歩行などの臨床機能が改善することは同じ意味ではありません。発現量だけで個々の患者さんの効果や持続期間を予測することはできません。
日本では2025年5月13日に「条件及び期限付承認」として製造販売承認されました。承認期限は3年です。2026年2月20日に薬価基準へ収載され、同日から国内販売が開始されています。保険診療で使用可能になったことと、すべてのDMD患者さんが対象になることは同じではありません。適応条件と専門施設での評価が必要です。
2026年9月時点の国内情報では、次の条件をすべて満たすDMD患者さんが対象です。
抗体検査は適応判定の一部ですが、陰性であれば自動的に投与できるわけではありません。遺伝子変異、肝機能を含む全身状態、感染症、併用治療、専門施設の適正使用指針などを総合して判断されます。
再生医療等製品について、限られた患者数のなかで有効性が推定され、安全性が認められた段階で、条件と期限を設けて承認する日本の制度です。「効果と長期安全性がすべて確定した」という意味ではありません。エレビジスでは、長期の有効性・安全性を確認する製造販売後臨床試験と、国内で使用した全症例を対象とする使用成績調査が承認条件に含まれます。期限内に得られたデータをもとに、改めて承認審査が行われます。
国際共同第III相EMBARK試験では、52週時点の主要評価項目であるNSAA総スコアの変化について、プラセボ群との統計学的な有意差は認められませんでした。一方、床から立ち上がる時間、10メートル歩行時間など一部の副次評価項目では改善が報告されています。試験結果は、すべての患者さんで運動機能が改善する、または進行が止まることを保証するものではありません。
一度の投与で必ず長期間効果が続く、DMDが根治する、病気の進行が完全に止まるとは現時点で断定できません。
発熱、嘔吐、肝機能検査値の上昇、血小板減少などがみられる場合があります。重大なリスクとして、重篤な急性肝障害・急性肝不全、免疫介在性筋炎、心筋炎、血栓性微小血管症などに注意が必要です。遺伝子変異の部位によって免疫介在性筋炎のリスクが問題となる場合もあり、国内適応では一部の遺伝子変異が除外されています。
2025年、海外の歩行不能DMD患者さんにおいて、エレビジス投与後の急性肝不全による死亡例が2例報告されました。これを受け、日本でも2025年8月に添付文書が改訂され、投与前後の肝機能評価、異常時の対応などの注意喚起が強化されました。
さらに厚生労働省の2026年の国内安全対策では、投与前の肝機能検査と投与可否判断の手順、ステロイド投与に関する注意、投与後に肝機能障害が現れた場合の対応、他科・他施設や専門家へ相談する体制を、適正使用ガイドなどで明確にする方針が確認されました。日本小児神経学会と日本肝臓学会を含む専門家の連携も求められています。
投与前には、DMD遺伝子変異、抗AAVrh74抗体、肝機能、血小板、心筋障害に関する検査、感染症や全身状態などが確認されます。免疫反応を抑える目的でステロイドが使用されますが、その量や期間を患者さんが自己判断で変更してはいけません。
投与後は、肝機能、血小板、心筋障害の指標、筋症状や全身状態などを繰り返し確認します。黄疸、濃い色の尿、強い倦怠感、繰り返す嘔吐、腹痛、出血しやすい、むくみ、息苦しさ、胸部症状、急な筋力低下などがあれば、投与施設へ速やかに連絡する必要があります。具体的な検査項目と頻度は最新の添付文書・適正使用指針と専門施設の指示に従います。
日本の適応は、抗AAVrh74抗体陰性、歩行可能、3歳以上8歳未満などの条件が定められています。米国では2025年11月、死亡を含む重篤な急性肝障害・急性肝不全を踏まえて枠付き警告が追加され、適応はDMD遺伝子変異が確認された4歳以上の歩行可能患者へ制限されました。米国の年齢・適応条件を日本の条件として読み替えることはできません。治療を検討する国の最新の承認情報に従う必要があります。
DMDの診断・遺伝学的検査を受けている方は、まず現在の主治医または小児神経・神経筋疾患を専門とする医療機関へ相談してください。治療適応、投与施設、期待できる点と不確実性、代替治療、通院・入院を含む管理について説明を受け、家族で検討することが大切です。治療の希望だけで適応が決まるものではなく、当院では適応判定や投与は行っていません。
DMDと、成人に多い他の神経筋疾患は原因や経過が異なります。症状だけで自己診断せず、発症年齢、遺伝歴、進み方、感覚症状、日内変動などを踏まえて評価します。
手足のしびれを伴う場合は末梢神経や脊髄などの病気も検討します。急に歩けない、飲み込みにくい、呼吸が苦しい、症状が急速に悪化する場合は、通常外来を待たず速やかな医療評価が必要です。
当院では、成人の筋力低下、歩行障害、しびれなどについて脳神経内科で相談できる症状を確認し、神経学的診察や必要な検査、受診先を検討します。幅広い症状は症状別ページでもご確認いただけます。DMDの遺伝子治療については、適応判断と投与が可能な専門施設へ紹介します。
根治や進行停止が確立した治療とはいえません。マイクロジストロフィン発現や一部の機能評価に関するデータはありますが、効果には不確実性があり、長期の有効性・安全性は製造販売後にも確認されます。
年齢だけでは決まりません。歩行可能であること、遺伝子変異の条件、抗AAVrh74抗体陰性、全身状態などを専門施設が総合的に評価します。
AAVに対する免疫反応などの問題があり、再投与の有効性・安全性は確立していません。将来の治療方針も含め、専門施設で説明を受けてください。
当院では投与していません。筋力低下や歩行障害などの神経症状について相談を受け、必要に応じて専門医療機関をご案内します。
エレビジスは、国内では抗AAVrh74抗体陰性、歩行可能、3歳以上8歳未満などの条件を満たすDMD患者さんを対象とする、条件及び期限付承認の遺伝子治療製品です。長期的な効果と安全性には確認中の点があり、重篤な急性肝障害・急性肝不全を含むリスクに対して専門施設で慎重な適応判断と継続的な管理が必要です。
当院への一般的な受診案内は、西新宿今野クリニックの診療時間・アクセスをご確認ください。
執筆・監修:医師 今野正裕
日本内科学会内科専門医・難病指定医
最終更新日:2026年9月3日