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感染性胃腸炎は、ウイルス、細菌、寄生虫などによって下痢、嘔吐、腹痛などが起こる病気の総称です。原因によって潜伏期間や対応は異なり、症状だけでノロウイルスなどの病原体を特定することはできません。多くは水分補給などの対症療法が中心ですが、脱水、血便、強い腹痛、意識状態の変化がある場合は早めの評価が必要です。
感染性胃腸炎は、病原体が消化管へ感染して起こる疾患群です。主な症状は下痢、吐き気・嘔吐、腹痛ですが、発熱、食欲低下、倦怠感などを伴う場合もあります。嘔吐だけ、下痢だけのこともあり、症状の強さや経過には個人差があります。
虫垂炎、腸閉塞、炎症性腸疾患、薬剤の影響などでも似た症状が起こります。「下痢と嘔吐があるから感染性胃腸炎」とは断定できません。
ノロウイルスは一年を通して発生しますが、特に冬季に増える傾向があります。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、感染しても無症状または軽い症状にとどまる場合があります。厚生労働省のQ&Aでは潜伏期間は一般に24~48時間とされていますが、症状や時間だけでノロウイルスとは診断できません。
ロタウイルスは乳幼児の急性胃腸炎の重要な原因で、水様性下痢や嘔吐を繰り返し、脱水が強くなる場合があります。潜伏期間は一般に2~4日です。成人にも感染しますが、年齢や免疫状態によって症状は異なります。乳幼児の予防には定期接種のロタウイルスワクチンがあります。
カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など、さまざまな細菌が原因になります。汚染された食品や水が関係する場合があり、血便、高熱、強い腹痛がみられることもありますが、これらがない細菌感染も、ウイルス性でも発熱する場合もあります。季節や症状だけで区別はできません。
下痢や嘔吐が続くと、水分と電解質が失われます。強い口の渇き、尿量や排尿回数の減少、立ちくらみ、ぐったりする、涙が出ない、口の中が乾く、反応が鈍いなどは脱水を疑う手がかりです。乳幼児、高齢者、妊婦、腎疾患・心疾患などのある方は早めの相談が必要になる場合があります。
潜伏期間は病原体ごとに異なります。ノロウイルスは一般に24~48時間、ロタウイルスは2~4日ですが、細菌性胃腸炎は原因によって数時間から数日以上と幅があります。「食べた直後だからその食事が原因」「3日後だから感染性ではない」とは判断できません。
診察では、発症日時、直前数日間の食事、同じ食事をした人の発症、家族・施設内の流行、旅行歴、動物との接触、抗菌薬の使用などを確認します。
主な感染経路は、便や吐物に含まれる病原体が手指や環境を介して口に入る糞口感染と、汚染された食品・水を摂取する経口感染です。ノロウイルスでは、吐物の処理時に生じた細かな飛沫や、汚染された環境を介して広がる場合もあります。
感染者が触れたすべての物から必ず感染するわけではありませんが、トイレ、ドアノブ、蛇口、共用タオル、調理器具などを介した拡大に注意します。
問診と診察で、脱水の程度、腹部所見、全身状態を評価します。すべての患者さんに病原体検査が必要なわけではありません。多くのウイルス性胃腸炎では、原因ウイルスが分かっても治療方針が変わらないことがあります。
高熱、血便、強い腹痛、重症化、症状の長期化、集団発生、最近の抗菌薬使用、海外渡航などがある場合は、便培養や便中抗原・遺伝子検査、血液検査などを検討します。ノロウイルス抗原検査は保険適用となる対象が限られ、陰性でも感染を完全には否定できません。画像検査も全員に行うものではなく、虫垂炎や腸閉塞など別の病気が疑われる場合に検討します。
治療の中心は、失われた水分と電解質を補うことです。飲める場合は経口補水を行い、水分が取れない、脱水が進んでいる場合などは点滴や入院治療が必要になることがあります。点滴は全員に必要ではなく、病原体を直接治す治療でもありません。
ウイルス性胃腸炎に抗菌薬は効きません。細菌性でも自然に改善するものや、抗菌薬が推奨されない病原体があります。一方、重症度や病原体、年齢、免疫状態などによって抗菌薬を検討する場合もあります。余っている抗菌薬を自己判断で服用せず、医師の判断に従ってください。
下痢止めは症状を軽くする場合がありますが、血便、高熱、特定の細菌性腸炎などでは適さないことがあります。年齢や持病によっても判断が異なるため、一律に使用・禁止するものではありません。吐き気止め、整腸薬、解熱鎮痛薬も、症状、脱水、併用薬などを確認して選びます。市販薬を重ねて使わず、自己判断で長期間続けないでください。
嘔吐直後に一度に大量に飲むと再び吐くことがあります。飲める場合は、経口補水液などを少量ずつ、回数を分けて補います。経口補水液は脱水時の水分・電解質補給に用いるもので、日常の飲料として大量に飲むものではありません。
スポーツ飲料や水だけでは、糖分・塩分の組成が経口補水液と異なります。乳幼児、高齢者、糖尿病、腎疾患、心不全などがある方は、飲ませ方や量を医療者へ相談してください。水分を保てない、飲むたびに吐く場合は受診が必要です。
水分を保てるようになり食欲が戻ったら、消化しやすく食べ慣れたものを少量から再開します。絶食を長く続ければ早く治るわけではなく、おかゆだけを必須とするものでもありません。脂肪分が多い食品、アルコール、刺激の強い食品などで症状が悪化する場合は控えます。
乳幼児では母乳を一律に中止せず、年齢や脱水の程度に応じて小児科等へ相談してください。食べられないことより、水分が取れないことや尿が減ることに注意します。
ノロウイルス対策では、アルコール消毒だけに頼らず、石けんと流水による手洗いと物理的な除去が重要です。次亜塩素酸ナトリウムを使う場合は用途に適した濃度・方法を製品表示で確認し、酸性洗剤などほかの製品と混ぜないでください。
復帰時期は原因、症状、年齢、施設や職場の規定、担当業務で異なります。下痢や嘔吐が治まっても便中へ病原体が排出されることがあるため、日数だけで「感染しない」とは判断できません。食品取扱者、医療・介護・保育従事者は、勤務先の感染管理担当者へ確認してください。
水分が十分に取れない、嘔吐・下痢を繰り返す、尿が減る、発熱が続く、血便や黒い便が出る、腹痛が強い、症状が改善しない場合は受診をご検討ください。乳幼児、高齢者、妊婦、免疫抑制状態の方、重い持病のある方は、症状が軽く見えても早めの評価が必要な場合があります。
これらがある場合は、通常外来を待たず早急な医療機関受診や救急要請を検討してください。
当院の胃腸炎診療ページでは、下痢・嘔吐・腹痛がある方の受診方法と診療内容をご案内しています。診察では発症時期、便や嘔吐の状態、食事歴、周囲の発症、服薬歴などを確認し、必要に応じて血液検査等を検討します。便検査や専門的な画像検査、入院治療が必要な場合は適切な医療機関へ紹介します。
一般的な相談は内科、発熱がある場合は発熱外来の案内、所在地はアクセスをご確認ください。
感染性胃腸炎には多様な病原体があり、症状や潜伏期間だけで原因を特定することはできません。水分・電解質の補給と感染対策が基本ですが、抗菌薬や下痢止めの適否は原因や重症度によって異なります。脱水、血便、強い腹痛、意識状態の変化などがある場合は、自己判断で様子を見続けず医療機関へ相談してください。